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リードアクロス課題を克服する方法:ニトロソアミン許容摂取量設定

登録日:2024/07/29

更新日:2024/07/30

ニトロソアミンは、発がん性を有することで知られる化合物の一種で、製薬業界にとって大きな懸念事項となっています。欧州医薬品庁 (EMA) の改訂されたガイドラインに従い、規制当局は、ニトロソアミンの生成可能性と変異原性および発がん性を調査する N-ニトロソアミンのリスク評価を、市販されているすべての医薬品に対して実施することを義務付けています。 N-ニトロソ化合物はICH M7 のコホート・オブ・コンサーンに含まれているため、ニトロソアミンの安全レベルを確保するには、化合物固有の許容摂取量(AI)を決定する必要があります。これは、次の 3 つの方法で実施できます。

● 発がん性分類アプローチ(CPCA)
● Enhanced Ames試験
● リードアクロス – 類似化合物の既知の毒性に基づいて物質の毒性を予測

CPCA、リードアクロス法では、費用と時間のかかる毒性試験は不要です。場合によっては 1,500 ng/日よりも高い摂取制限値も許容できます。 
しかし最近まで、リードアクロスはマニュアルで実施されており、ニトロソアミンの AI 値の評価には多くの課題がありました。これらの課題には、次のようなものがあります。

ニトロソアミン構造の複雑さ
● 多様な化学構造: ニトロソアミンは多様な化学構造を示し、毒性の程度も異なります。この構造の多様性により、比較のための適切なアナログを特定することが困難です。
● 代謝経路: 体内でのニトロソアミンの代謝活性化は大きく異なる可能性があります。既知の化合物に基づいて新しいニトロソアミンの代謝を予測するには、代謝経路の詳細な理解が必要ですが、その情報がすぐに得られるとは限りません。

データの可用性と品質
● データが限られている: 包括的な毒性データは、少数のニトロソアミンについてのみ利用可能で、新しい化合物について関連するアナログを見つけることは困難です。
● データ ソースの変動: 毒性データの品質と信頼性は異なる場合があり(実験デザイン、エンドポイント、報告基準)、直接比較することが困難です。

規制上の課題
● 規制当局の承認: 規制当局によって、リードアクロス手法に対する要件や承認レベルが異なる場合があります。

計算と方法論の問題
● 標準化されたプロトコルの欠如: マニュアルによるリードアクロスには普遍的に受け入れられているプロトコルがないため、データの解釈と適用に矛盾が生じ、結果を再現することが困難になる可能性があります。
● 主観性と専門家の判断: マニュアルによるリードアクロスは専門家の判断に大きく依存しており、評価プロセスに主観性と変動性をもたらす可能性があります。


業界としてこれらの課題を克服し、適切なニトロソアミン化合物の AI を設定するにはどうすればよいでしょうか?

1. in silicoツール
Lhasa は、化学物質の安全性評価をサポートする in silico ソリューションの開発に重点を置いています。Acrosticは、ニトロソアミン化合物の AIの設定を容易にするために設計された、新しいin silicoツールです。科学的にロバストなリードアクロス手法を利用し、カスタマイズされたアナログライブラリを生成し、ユーザーが最も適切なサロゲートを選択できるようにします。

Acrostic の特徴は次のとおりです。
● 当社の毒性データベースVitic、Lhasa 発がん性データベースなどの公開データと、社内独自データソースの統合
● 最近の Lhasa 出版物*に基づいた、NDSRI の発がん性レベルを定義する構造的特徴
● 適切なアナログを決定し、専門家のレビューをサポート

2. データの共有とコラボレーション
業界で連携しデータ共有を促進することで、包括的なデータベースを構築し、リードアクロスの堅牢性を向上させることができます。
コンプレックスニトロソアミン(NDSRI)データ共有イニシアチブは、構造的に複雑なニトロソアミンのAmesデータを共有します。コンソーシアムメンバーが共有するデータをデータベース化することで、リードアクロスを可能にすると共に、重複したテストを回避します。

インシリコツール・Acrostic、またデータ共有イニシアチブにご興味ありましたら、下記までお問い合わせください。
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担当:増子 聡
Email: satoshi.mashiko@lhsalimited.org
TEL: 080-9804-1171
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*参考文献
1. Cross et al., "Developing Structure-Activity Relationships for N-Nitrosamine Activity", Comput Toxicol. 2021 Nov;20:100186.
2. Ponting et al., "Strategies for Assessing Acceptable Intakes for Novel N-Nitrosamines Derived from Active Pharmaceutical Ingredients", J Med Chem. 2022 Dec 8;65(23):15584-15607.
3. Kane et al., "Developing and validating read-across workflows that enable decision making for toxicity and potency: Case studies with N-nitrosamines", Comput Toxicol. 2024 Mar;29:100300.

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