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米国特集 第3回:FDAにおける再処理(洗浄・消毒・滅菌)要件

登録日:2026/04/23

各国の規制当局はいずれも、医療機器の再生処理(リプロセシング)が患者の安全にかかわる重要な要素であると認識しています。そのため、再生処理に関する表示(ラベリング)については、ISO 17664-1に整合した手順書の提供を求めている点は共通しています。また、滅菌が必要な場合には、適切な滅菌規格に基づく滅菌バリデーション、あるいはその要約を提出することが一般的に期待されています。 

一方で、米国FDAは、ほかの多くの規制当局と比べて、再生処理の妥当性を示すために要求する情報量と検証内容が格段に多いという点が大きな特徴です。FDAは再生処理に関する公式ガイダンスを公表しており、AAMI TIR12(再生処理を考慮した設計と試験)や、洗浄バリデーションに関するAAMI ST98(旧TIR30)などを参照することを求めています。 

まずラベリングに関しては、FDAと他規制当局の基本的な期待は大きく変わりません。すなわち、再生処理に必要なすべての材料、市場で入手可能な洗浄剤・消毒剤、分解・組立手順、警告や注意事項、再使用可能かどうかの判断基準、問い合わせ先情報などを明確に記載する必要があります。 

しかし、再生処理バリデーション(機器ベース)については、FDAの要求は非常に厳格です。FDAは、実際の医療機器そのものを用い、再生処理上の「ワーストケース」(多くの場合は耐用年数末期)で試験を実施することを求めます。特にFDAは、市販されている洗浄剤や消毒剤の一般的な有効性表示だけでは不十分であり、「医療機器に対して、規定した再生処理条件で有効であること」を実証することを要求しています。他の規制当局では通常、滅菌バリデーションは要求するものの、洗浄や消毒のバリデーションは要求しません。 

さらにFDAは、再生処理に用いる薬剤や工程に対する機器の適合性(耐久性)を重視しており、意図された使用期間を通じて機器が適切に再生処理に耐えられることの証明を求めます。この点も、他の規制当局では通常求められていません。 

提出資料の範囲についても差があります。FDAは、感染リスクが高いと認識されるセミクリティカル機器やクリティカル機器については、洗浄・消毒・滅菌バリデーションの報告書の提出を求めます。一方、非クリティカル機器では要約の説明のみ受け入れる場合があります。他の規制当局では、リスク区分ごとの報告要求を行わないことが一般的です。 

加えてFDAは、再生処理後の生物学的安全性評価を重視しています。複数回の再生処理をシミュレーションした後で、残留薬剤や材料変化が生物学的安全性に悪影響を及ぼさないことを確認する試験を、セミクリティカルおよびクリティカル機器に対して求めています。この要求も、他の規制当局では通常求められません。 

さらに特徴的なのが、ユーザーベースの再生処理バリデーションです。FDAは、ユーザ―が再生処理手順を「理解できること」だけでなく、「現実的に実行できること」までを検証するよう求めています。これはIEC 62366-1に基づくユーザビリティ試験やヒューマンファクター評価の一部、または独立した試験として実施されます。他の規制当局では、再生処理が「クリティカルタスク」と判断された場合にのみ限定的に評価されることが一般的です。 

総括すると、FDAは再生処理に関して、表示、機器ベースの検証、ユーザーベースの検証のすべてにおいて、最も厳格な要求を課す規制当局であると言えます。その結果、他国ですでに承認されている医療機器であっても、FDAに対しては追加の再生処理試験が必要となるケースがあり、これが申請上の大きなハードルとなっています。メーカーは、FDA申請前の段階から再生処理要件を十分に考慮することが不可欠です。 

【略語一覧】 FDA:米国食品医薬品局(Food and Drug Administration) 
ISO:国際標準化機構(International Organization for Standardization) 
ISO 17664-1:医療機器の処理情報に関する国際規格(ISO 17664‑1: Processing of health care products)
AAMI:医療機器振興協会(Association for the Advancement of Medical Instrumentation) 
TIR:技術情報報告書(Technical Information Report) 
AAMI TIR12:再生処理を考慮した設計・試験に関する指針(AAMI TIR12: Designing, testing, and labeling reusable medical devices for reprocessing) 
AAMI ST98:洗浄バリデーションに関する規格(AAMI ST98: Cleaning validation of health care products) 
IEC:国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission) 
IEC 62366-1:医療機器のユーザビリティ工学に関する国際規格(IEC 62366‑1: Application of usability engineering to medical devices)

【キーワード】
FDA / ISO 17664-1 /リプロセシング / ラベリング / 洗浄バリデーション / 消毒 / 滅菌 /生物学的安全性 / ユーザビリティ / ヒューマンファクター / ワーストケース 

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