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米国特集 第2回:米国FDAにおける生物学的安全性に関する要件

登録日:2026/04/23

医療機器の生物学的安全性は、いずれの規制当局においても重要な評価項目であり、基本的にはISO 10993-1を基準として、機器の使用態様に応じて必要な生体影響を判断します。ISO 10993シリーズでは、生物学的安全性が十分に確立されていると考えられる機器については、必ずしも新たな試験を要求しない場合があり、また近年は動物試験を低減する目的で、in vitro試験や化学的特性評価(ISO 10993-18)および毒性学的リスク評価(TRA、ISO 10993-17)の活用も認められています。 

しかし、これらの代替手法をどの程度認めるかについては、規制当局ごとに解釈が異なっており、とりわけFDAは他の規制当局と比べて非常に慎重かつ厳格な立場を取っています。FDAは2023年に生物学的安全性に関するガイダンスを更新し、独自の見解を明確にするとともに、FDAが認知した規格を示す整合規格のデータベースを提供しています。 

まず、「生物学的安全性が十分に確立されている(well-established biocompatibility)」という考え方において、FDAは最も限定的な解釈を行っています。他の規制当局では、文献調査や類似機器の調査により同一の原材料が他の医療機器等で使用され、安全性が確保されていることを示せば、生物学的安全性試験の代替として認められる傾向にありなす。一方で、FDAは、同一の製造所が、同一の製造工程および加工工程により、同様の使用条件および体内接触部位で使用された原材料が、過去にFDAにより審査・承認されている場合に限り、生物学的安全性が確立されていると見なします。一方で、同一の原材料であっても、製造工程の違いにより、物理的・化学的特性が変化し、異なる生物学的反応を引き起こす可能性がありうる、とFDAは考えています。例外として、FDAガイダンスの付属書Gにリストした一部の原材料について、健常な皮膚のみに接触する場合に限り、生物学的安全性が確立されているとみなします。 

次に、in vitro試験とin vivo試験の扱いについても違いがあります。感さ性(ISO 10993-10)や刺激性(ISO 10993-23)では、in vitro試験が含まれており、規制当局によっては実験動物の飼養保管等及び動物実験の適正化(3R)の原則に沿って、in vivo試験の代替として受け入れています。一方で、FDAは生物学的安全性に関するガイダンスにおいて、「in vitro試験がin vivo試験と同等の情報が得られる場合に限る」としており、in vitro試験とin vivo試験が同等であることの明確に証明ができない限りは、in vivo試験、あるいはin vitro試験とin vivo試験の両方が必要となります。 

また、FDAは化学的特性評価に関するドラフトガイダンスを公表しており、化学的特性評価や毒性学的リスクアセスメント(TRA)について、限定的な受け入れにとどめています。多くの規制当局では、化学的特性評価及びTRAを、生物学的安全性の評価として受け入れていますが、FDAは、全身毒性、遺伝毒性、発がん性、生殖・発生毒性の評価として、化学的特性評価及びTRAを受け入れていますが、細胞毒性、刺激性、感作性の評価については、化学的特性評価及びTRAを受け入れていません。FDAドラフトガイダンスに示される化学的特性評価の要求レベルは通常よりも高く、結果として、化学的特性評価及びTRAにより生物学的安全性の試験を省略する妥当性を示すよりも、試験を実施した方が、FDAが受け入れやすいと考えます。 

さらにFDAは、一部の試験機関におけるデータの信頼性や不正問題に強い懸念を示しており、過去には要件を満たしているように見える試験結果であっても却下した事例があります。そのため、試験機関の選定と適格性評価を慎重に行うことが重要とされています。 

総じてFDAは、生物学的安全性に関して他の規制当局よりも厳しい要求を課しており、他国ですでに承認された医療機器であっても、生物学的安全性に関する追加の試験を要求する可能性があります。メーカーは事前にFDAの要求を十分理解し、必要に応じてQ-Submissionを活用するなど、慎重な準備を行うことが求められます。 



【略語一覧】
FDA:米国食品医薬品局(Food and Drug Administration) 
ISO:国際標準化機構(International Organization for Standardization) 
ISO 10993:医療機器の生物学的安全性に関する国際規格(ISO 10993 series) 
TRA:毒性学的リスク評価(Toxicological Risk Assessment) 
3Rs:動物実験代替・削減・改善の原則(Replace, Reduce, Refine) 
ASCA:適合性評価認定制度(Accreditation Scheme for Conformity Assessment) 
Q-submission:FDA事前相談制度(Q-Submission) 
in vitro:試験管内試験(in vitro testing) 
in vivo:生体内試験・動物試験(in vivo testing)

【キーワード】
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