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ポストコロナ時代のGDPマッピングと温度モニタリング戦略を探る
第2回 GDP要件へ準拠するための具体策―温度マッピングと常時モニタリング
ヴァイサラ
ヴァイサラは、「ポストコロナ時代のGDPマッピングと温度モニタリング戦略」と題するセミナーを開催し、GDPガイドラインに準拠した適切な医薬品保管管理のヒントを示した。ここでは、その内容を① GDPの重要性が認識されてきた経緯、②規制準拠の具体的要件、③ビジネス環境の変化も含めた将来像―と3回に分けて紹介。過去、現在、未来と時系列に沿ってGDPの変遷を辿ることで、今後求められる対応策の本質を探る。第2 回となる本稿では、現在求められているGDP要件へ準拠するための具体策として、温度マッピングおよび常時モニタリングの実施方法についてまとめる。
※解説 ポール ダニエル氏 VAISALA Inc. シニア GxP レギュラトリエキスパート
■温度マッピングの目的
第1回(PTJオンライン2023年5月)で紹介したように、GDP関連の規制・文書が世界中で発出された経緯を踏まえ、現在は保管や輸送時の温度管理の重要性が広く認知されている。中でも具体的な対応ポイントとなるのは、『機器/施設の整備』、『温度マッピング』、『継続的な常時モニタリング』の3点だ。
セミナー講師のポール・ダニエル氏は、機器/施設のハード面の重要性を簡潔に語ったうえで、GDP準拠の実務的要点として温度マッピングと常時モニタリングの2点を詳細に解説した。
「25年前に私が初めて温度マッピングを実施した時とは機器や手法は異なっていますが、実施目的は今も変わっていません。あらゆる場所で規定どおりに温度管理されていることを確認し、文書化してエビデンスを残すという温度マッピングの目的は、昔も今も変わりません」(ダニエル氏)。
ダニエル氏は、温度マッピングの10のステップを図のようにまとめ、具体的に各ステップの解説を進めた。
■温度マッピングの10ステップ
◎ステップ1:マッピングプロトコルの作成と承認
マッピング活動に関する手順などをまとめたプロトコルを作成する。必要な手段や手続きなどを記載して、関係各所から承認を受けることになるが、実際の手順も示す文書であり、SOPの一部とも捉えられる。なお、プロトコルは自社で作成するほか、ベンダーから提供されるテンプレートを用いる方法もある。
◎ステップ2:データロガーの選択
適切なデータロガーを選定するには、例えば▽必ず一定の間隔でデータを記録する、▽意図した目的に十分なメモリ容量がある、▽校正済みで有効な校正証明書がある、といった基準に照らして選ぶことが重要となる。
◎ステップ3:校正の検証(事前校正)
ロガー選択時にも重要な校正だが、マッピング調査前にも、ロガーが正確であることの検証のために実施する。なお、結果はプロトコルに記入する必要がある。
◎ステップ4:データロガーのプログラミング
サンプリングの間隔と期間を設定するためのプログラミングを実施する。すべてのデータロガーを同期して、同時にデータを収集する。最大推奨間隔は15分で、データロガーが調査期間全体を記録できることを確認することが要点となる。なお、機器や設備は経年で劣化していくため、設備特性に応じて1~5年ごとにマッピングをし直す必要がある。
◎ステップ5:データロガーの配置
マッピング対象となる場所にデータロガーを配置する。危険な場所では安全上の注意を払い、必要に応じてISPEやWHOのガイドラインに従って配置する。
◎ステップ6:データロガーの回収
配置時と同様、危険な場所では安全に注意しながらすべてのロガーを回収する。
◎ステップ7:校正の検証(事後校正)
実施した計測値に誤りがないか確認するために事後校正を行う。なお、事後校正の許容基準は、事前校正よりも広くすることができる。事前校正同様に結果をプロトコルに記入する。
◎ステップ8:データのダウンロード
データロガーからマッピングデータをダウンロードして取得する。取得後、データを保存してバックアップコピーを作成する。
◎ステップ9:データの分析
データの分析は、ロガーのソフトウェア内の機能を活用する。各ロガーの最大値と最小値を特定し、すべてが許容基準内にあれば合格となる。大小の逸脱が発生することもあるが、小さな逸脱は許容される場合もあるため、許容基準を確認する。大きな逸脱や複数個所で逸脱が見つかった場合は不合格とし、設定値の調整と加熱/冷却システムの点検・整備後に、ステップ5の「データロガーの配置」から繰り返すこととなる。
◎ステップ10:マッピングレポートの作成と承認
最終ステップはレポート作成で、マッピングデータを示し、許容基準が満たされていることを証明する。レポートの重要項目は、▽すべての生データを含めること、▽逸脱や偏差について検討すること、▽利害関係者からレポートの承認を受けること、▽レポートを安全に保管すること―などが挙げられる。
■常時モニタリング、効率的に実施するテクノロジー
多くのステップを経て温度マッピングを実施することで、機器が所期の機能を果たすことを証明するとともに、常時モニタリングによって環境が安定していることを確認することもGDP準拠の要点になる。多数のセンサで短時間行うマッピングに対して、モニタリングは少数のセンサで長時間実施することとなる。
「モニタリングの歴史として、昔は記録簿と温度計で行っていたものが、次第に『チャートレコーダー』を用いる手法になり、最近ではネットワークを利用したシステムへと進化してきました。中央サーバーにネットワークがつながり、データをそこに一括集積して、必要に応じてアラームを発報するというシステムです。このネットワークシステムや用いる技術も進歩を遂げています」と、ダニエル氏は技術の変遷を説明する。
Wi-Fiによる運用もみられるが、Wi-Fiは帯域幅が広く、電力要件が高いといったことに加え、セキュリティ上の懸念から常時モニタリングには向いていないというが、この懸念を払しょくするため、注目されているのがワイヤレスモニタリングだ。
「ワイヤレスとは、イーサネットケーブルや電源ケーブルなしで使用できる自由度の高いシステムです。例えば当社では『VaiNet ワイヤレスデバイス』という独自のデバイスを提供しています。これは高いセキュリティに加え、Wi-Fiの5倍という長距離通信を可能にし、標準的な単3電池で18カ月有効な長寿命性をもつのが特長です」と、ヴァイサラが提供している最新のテクノロジーを紹介した。
なお、ワイヤレスシステムでもバリデーションや校正が必要になるが、それらの対応も含めた成功のポイントとしては、「経験豊富なベンダーを活用すれば、ドキュメンテーションも含めて容易かつ効率的に実施することが可能になる」とし、ベンダーとの協働が効率化に繋がることを示唆した。
最新のテクノロジーを活用することで、GDP準拠を効率的に進められることが示されたが、技術の進展がめざましい環境において、今後はどのような変化がもたらされるのか、最終回となる次回(第3回/2023年7月配信)はその将来像をまとめる。
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ヴァイサラ株式会社
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