Lhasa Limited

ニトロソアミン不純物のリスク評価 実践ガイド

登録日:2026/10/21

更新日:2026/10/26

ニトロソアミン不純物のリスクをどのように評価すればよいのでしょうか。
リスク評価では、①ニトロソアミン生成の可能性を特定し、②既存の変異原性・発がん性データを収集し、③不足するデータを予測手法で補い、④許容摂取量(Acceptable Intake)を設定し、⑤管理戦略を策定することが重要です。
本ガイドでは、規制当局のガイダンスや業界での実務経験をもとに、それぞれのステップをわかりやすく解説します。

N-ニトロソアミン類は、アミンにニトロソ基が結合した化合物です。多くのニトロソアミンは変異原性および発がん性を示す可能性があり、極めて低濃度でもリスクが懸念されることから、ICH M7(R2)では特に注意すべき不純物群として位置付けられています。そのため、世界各国の規制当局は、原薬(API)および製剤の両方について、文書化されたリスク評価の実施を求めています。

ニトロソアミンはどこで発生するのか?
リスク評価の出発点となるのが、ニトロソアミンの生成可能性の評価です。
ニトロソアミンが生成するためには、一般的に以下の2つが必要です。
● アミン(特に二級アミン)
● ニトロソ化剤
これらが酸性条件などの適切な環境下で接触すると、ニトロソアミンが生成する可能性があります。

ライフサイクル全体を評価する
ニトロソアミンは製造工程だけでなく、保管中にも生成する可能性があります。そのため、リスク評価では以下を包括的に検討する必要があります。
● 原料・試薬
● 分解生成物
● 交差汚染
● 製造工程
● 薬、添加剤、包装材料間の相互作用

合成ルートを遡って確認する
レトロシンセシス(逆合成解析)は、アミンとニトロソ化剤が接触する可能性のある工程を特定するための有効な手法です。

添加剤や包装材料も見落とさない
亜硝酸塩は添加剤中に存在する代表的なニトロソ化不純物です。また、包装材料もニトロソアミン生成に関与する可能性があります。
例えば、ヒートシール工程において、包装材料中のニトロセルロースが印刷インク中のアミンと反応するケースが報告されています。

製品の優先順位付けを行う
最大1日投与量や投与期間を考慮し、患者曝露量が大きい製品から優先的に評価を進めることが推奨されます。
このステップの目的は、実際に生成する可能性がある、あるいは合理的に生成が想定されるニトロソアミンを特定することです。その後の評価は、こうしたリスク候補に焦点を当てて進めます。

予測を行う前に収集すべきデータは?
まずは既存の実験データを確認し、不足する部分を予測手法で補うのが基本です。
既存データを調査する
ニトロソアミンごとに、変異原性や発がん性に関する既存データを調査します。予測よりも実験データが優先されます。

Ames試験データの信頼性を確認する
過去に実施されたAmes試験の中には、現行OECD TG471に適合していないものもあります。そのため、試験条件の妥当性を確認することが重要です。
適切に実施されたAmes試験では、ニトロソアミンの発がん性との良好な相関が確認されています。

データ共有の活用
業界横断的なデータ共有活動により、単独企業では取得が難しい亜硝酸塩濃度やニトロソアミンの測定データを活用できる場合があります。

データが不足している場合、どのようにリスクを予測するか?
十分な実験データが存在しない場合、ICH M7(R2)はin silico評価の活用を認めています。

2種類の(Q)SAR手法を使用する
ICH M7では、不純物評価において以下の2種類の補完的な(Q)SAR手法の使用が推奨されています。
● 専門家ルールベース手法
● 統計学的手法
これらを用いてAmes試験結果を予測し、不純物分類に活用します。

エキスパートレビューが重要
予測結果が境界的または矛盾する場合には、化学構造や作用機序を踏まえた専門家によるレビューが不可欠です。

リードアクロスの活用
規制当局はニトロソアミン評価においてリードアクロスを受け入れています。 構造類似性に基づいて適切な類縁体を選定し、その妥当性を文書化することで評価に活用できます。

許容摂取量(Acceptable Intake)はどのように設定するか?
CPCAを出発点とする
ニトロソアミン特有の評価手法として、N-ニトロソ基周辺の構造に基づくCPCA(Carcinogenic Potency Categorisation Approach)が利用されています。

信頼できる発がん性データを優先
対象ニトロソアミン、または十分に妥当性が示されたリードアクロス候補について発がん性データが利用可能な場合は、そのデータに基づき化合物固有の許容値を設定できます。

許容値を調整できる場合
以下のようなケースでは、許容摂取量の調整が認められる場合があります。
● 信頼できる化合物固有の発がん性データが存在する場合
● 適切な類縁体データが利用できる場合
● 生涯曝露未満(Less-Than-Lifetime Exposure: LTL)の考え方を適用する場合
● 適切に実施された陰性試験結果が存在する場合

リスクをどのように管理し、文書化するか?
まずはパージ評価を検討する
ICH M7管理オプション4に基づくパージ評価は、最初に検討すべき管理方法の一つです。
十分なパージ能力が示される場合、分析試験が不要となることもあります。

規制要件に沿った段階的アプローチ
一般的に、規制当局は以下の流れを求めています。
1.リスク評価
2.必要に応じた確認試験
3.許容摂取量以下への管理

申請資料として十分な文書化
リスク評価書には以下を明確に記載する必要があります。
● 対象不純物の網羅性
● 各判断の根拠
● 管理戦略
審査担当者が再現性を持って評価できる内容とすることが重要です。

Lhasaのソリューション
Lhasaでは、ニトロソアミンリスク評価の各段階を支援するために以下のソリューションを提供しています。
● Ames試験結果予測のための補完的(Q)SAR手法
● 精査済みの毒性・発がん性データベース
● パージおよび分解リスク評価支援
● ニトロソアミン発がん性評価のためのリードアクロス支援
これらを活用することで、より効率的で科学的根拠に基づいたニトロソアミンリスク評価が可能になります。

これらソルーションにご興味ありましたら、下記までお問い合わせ下さい。
担当:増子 聡
Email: satoshi.mashiko@lhasalimited.org
TEL: 080-9804-1171

企業情報

Lhasa Limited

詳しく見る

このリリースに関連する商材情報

TOP