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AIとデータ活用が変える製薬DX
薬事査察・研究開発・品質管理の最前線

ビジネスエンジニアリング

 2026年5月20日~22日に幕張メッセで開催されたインターフェックスWeek東京/再生医療EXPO東京において、ビジネスエンジニアリング株式会社は3日間にわたって出展社セミナーを行った。AIをはじめとする最新のデジタル技術を活用した業務効率化の取り組みや品質管理のDXを進めるうえでの重要なポイントなどが示された。
 

■規制対応業務におけるリサーチの常識を覆すスピードと予測力

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 初日に登壇したデジタルライフサイエンス本部の平井理博氏は、規制情報に関わる業務には「3つの壁」があると指摘した。

 1つ目は、各国の規制当局・治験登録機関・科学文献といった情報源が世界中に散在している「情報の分断」。2つ目は、過去実績への過信によってリスクの兆候を見逃してしまう「深刻な死角」。そして3つ目は、調査業務に膨大な時間と人員を要することで発生する「リソースの枯渇」である。

 

 こうした課題に対して平井氏が示したのが、規制/査察/臨床情報AI統合データベース「Orca1 Arcana(オルカ・ワン アルカナ)」である。世界42以上の国・地域にまたがる規制情報、査察情報、臨床データ、市場データなどをリアルタイムで横断的に収集・解析し、製薬企業の意思決定を加速させるものである。半年かかるような調査も数分で完了できるほどの大幅な迅速化、リコールや供給不足の予兆察知、臨床試験最適化とコンプライアンス対応の強化、さらにM&Aやデューデリジェンスの高度化が期待できると平井氏は説明した(図1)。

 講演中に行われたデモでは、特定の製造所の査察履歴や警告書、査察官の名前やこれまでの査察の傾向などが即座に参照できることに加え、それらの情報を踏まえた製造所のリスク評価レポートを自動生成する様子などが示された。

 平井氏は続いて、GxP業務支援AIエージェント基盤「Orca1 Teammate(オルカ・ワン チームメイト)」の機能も紹介した。例えば、有害事象データの定期自動収集、SOPや治験関連文書などの改訂履歴を追跡する文書管理、逸脱管理やCAPAに対応した手順実行、既存の品質管理システムとのデータ授受などを通じて、薬事・品質関連業務の標準化と効率化を支援すると説明した。

 平井氏は「ターゲット製品やサプライヤーの“真の姿”を可視化してみませんか」と述べ、規制対応業務を見直す必要性を訴えた。
 

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               図1 Orca1 Arcana導入によるメリット

■研究開発における“ダークデータ”の解消がAIの真の価値を引き出す

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 2日目には、デジタルライフサイエンス本部の三浦淳平氏が研究開発領域のDXについて講演した。三浦氏は、これまで進められてきた「電子化」はあくまでも通過点であり、その先の「知能化」まで見据える必要があると指摘した。

 電子化でアナログな転記作業は削減できても、AIに読み込ませるためのデータ準備が別途必要になっているケースは多く、これが研究開発DXのボトルネックになっているという。

 

 その要因として三浦氏が挙げたのが、AIに供給されるデータの致命的な欠陥である。断片的に切り出されたデータは、他の実験や過去のデータとの関連性、取得時の条件、処理の流れといった文脈を失い、AIにとっては活用しにくい“ダークデータ”になっているという。三浦氏は、AIの真の価値を引き出すためにはダークデータの解消が欠かせないと語り、そのためには、「Structure」「Connect」「Synthesis」の3つの要素が必要であるとした(図2)。

 土台となる「Structure」は情報の基盤であり、同社開発のクラウドサービス「Business b-ridge(以下、b-ridge)」がデータを構造化し、AIが理解できる形で蓄積する「Connect」はデータとAIをつなぐことであり、「Connect AI」によりノーコードで実現できる。「Synthesis」は膨大な情報をもとに示唆や予測を提示することであり、生成AIの活用で自然言語の問いかけにも応じることができる。

 講演では、b-ridgeに蓄積された申請・実験データに対し、生成AIが自然言語での問いかけに応じて改善点や示唆を返すイメージも示された。AIが過去データや最新動向などを組み合わせて分析し、新たな仮説や着眼点を示すようになれば、研究者はデータ探索や整理といった作業から解放され、本来注力すべき科学的な考察に集中できるようになるという。三浦氏は「まずはAIに問いかけられるデータを整理すべく、データのあり方を考えてほしい」と呼びかけた。
 

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             図2 自律的な研究開発AIに必要な3つの要素

■品質管理DXに求められるDI対応・内製化・データ統合

小林氏.JPG 最終日には、デジタルライフサイエンス本部の小林和彦氏が登壇し、品質管理領域におけるDXの進め方について講演。①研究・実験の電子化や自動化が十分に進んでいないこと、②研究開発領域を中心にトライ&エラー型のアプローチが増えていること、③データ基盤の強化とデータ品質の向上が求められていること―の3点を課題として挙げた。

 電子化や自動化の推進においては、まずデータインテグリティ(DI)の確保が重要だとしたうえで、「DI対応」と「データ活用」は目的が異なるため、それぞれの目的を果たすための機能とデータ構造は論理的に切り分けて設計する必要があると説明した。

 具体的には、まずは分析機器から取得したデータをDI確保した形で保管し、そのデータを報告書作成や分析のために二次利用していく構成が有効だという。トライ&エラー型アプローチへの対応については、「汎用部品」と「内製化」をキーワードに挙げた。ここでいう「汎用部品」とは、記録に必要な章の雛型を指し、これらをあらかじめ準備し、その組み合わせによって試験記録や報告書を作成できるようにすることが重要であるという。あわせて、Excelなど既存の使い慣れたツールを使用することで内製化しやすい環境を整え、現場が自ら構築・運用できるようにすることが重要だとした。

 データ基盤については、単なるデータの蓄積ではなく、「いつ、誰が、どのように取得したか」といった付随情報も含めて統合的に管理し、分析ツールやAIと連携できる状態にすることが重要だと説明した(図3)。

 これらの考え方を支えるソリューションとして、小林氏はELN(電子実験ノート)およびSDMS(科学データ管理システム)を柱とする「NuGenesis」、試験機器と上位システムを接続する「Sm@rtLine Data Cockpit(SDC)」を紹介し、自社の業務に合った仕組みを構築していくことが重要であるとした。
 

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             図3 品質管理領域DX対応に関するまとめ

 同社では、製薬業界における製造、研究開発、品質管理のDXを支えるさまざまなソリューションを提供している。今後も本稿で紹介したようなデータ活用や業務効率化を通じて、顧客のDX推進を支援していく。

 


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