株式会社東レリサーチセンター

先端分析技術シンポジウム2024 開催について

2024/10/28

開催日 2024年11月29日(金)
開催地 Web

来る11月29日(金)に株式会社東レリサーチセンターは「先端分析技術シンポジウム 2024」を開催します。

 当社は、1978年の創業以来、常に新しい分析技術を開発・導入し、“分析の極限追求”をキーワードに、分析の高度化に取り組んでまいりました。2022年に設立した「先端分析プラットフォーム」をオープンイノベーション拠点として、分析技術の発展をより一層推進してまいります。
 
 本シンポジウムでは、「先端分析が切り拓く新たな科学」をテーマに、注目される学術・技術分野の第一線でご活躍の先生からご講演を賜ります。

 本年は、東京大学の柴田直哉(しばた・なおや)先生(東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構 機構長・教授)を特別講師としてお招きし、最新の研究成果についてご講演いただきます。柴田先生は、材料界面の機能発現メカニズムの解明と設計を目指した先進材料研究と、原子分解能走査透過型電子顕微鏡の最前線を開拓する先端ナノ計測研究を車の両輪として研究を進めています。

 また、当社の技術開発において、この一年で目覚ましい成果をあげた 3件の最新 “先端分析技術” について、ご紹介させていただきます。 是非、多くの皆様にご参加いただきますようお願いいたします。

  ◆講演内容

<招待講演>「原子分解能磁場フリー電子顕微鏡の開発- 最も汎用性の高い原子分解能電子顕微鏡を目指して -」
        東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構 機構長・教授 柴田 直哉先生

 電子をプローブとして用いる電子顕微鏡は20世紀前半に開発され、21世紀に入り収差補正技術の実現に伴って飛躍的な性能向上が進んだ。現在では物質を構成する原子1個1個を直接観察することも可能になった。しかし、世界最高性能の電子顕微鏡ですら未だ理論限界には程遠い性能であり、まだまだ発展途上にある技術である。
 東京大学と日本電子株式会社は、汎用性の高い原子分解能電子顕微鏡の開発を目指し、長年にわたり共同開発を進めてきた。その中で、現在大きな注目を集めているのが、原子分解能磁場フリー電子顕微鏡(Magnetic-field-free Atomic-Resolution STEM: MARS)である。このMARSは、新開発の磁場フリー対物レンズを搭載し、電子顕微鏡の大問題であったレンズ磁場による試料への悪影響を排除し、磁性材料における原子分解能観察を実現した[1,2]。さらに、微分位相コントラスト(Differential Phase Contrast: DPC)法を組み合わせることで、反強磁性体内部の原子磁場の実空間観察にも世界で初めて成功した[3]。つまり、原子分解能電子顕微鏡の鬼門とされてきた磁性材料を克服したことで、MARSは最も汎用性の高い原子分解能電子顕微鏡となった。このMARSは市販装置として社会実装が進んでおり、今後世界中で幅広く活用されることが期待されている。本講演では、MARSの装置概要およびアプリケーション、さらにはその先にある原子分解能電子顕微鏡の挑戦について紹介する。

[1] N. Shibata et al., Nature Comm., 10, 2380 (2019).
[2] T. Seki et al., Nature Comm., 14, 7806 (2023).
[3] Y. Kohno et al., Nature 602, 234-239 (2022).



<講演1> 「meV分解能EELSによって可能となる新たな局所分析」
      東レリサーチセンター 形態科学研究部 川崎 直彦

 走査透過電子顕微鏡(STEM)に付属した電子エネルギー損失分光法(Electron Energy-Loss Spectroscopy: EELS)は、1 nm程度以下の空間分解能で、試料の局所的な元素組成、電子状態を評価するツールとして広く普及している。しかし、汎用的なSTEM-EELSのエネルギー分解能は0.3~0.7 eV程度であり、また、赤外領域(1.5 eV以下)のシグナルはゼロロスピークの裾に埋もれて検出することが難しかった。モノクロメータ搭載STEMを用いると、エネルギー分解能はmeVオーダーに到達し、検出できる範囲が低エネルギー側へ飛躍的に拡大する。本講演では、半導体デバイスにおけるキャリア濃度、光学デバイスにおける光学特性などを局所的に評価した実例を紹介し、さらに解析が期待される材料や分野を列挙して、モノクロメータ付EELSの有用性を示したい。


<講演2> 「AFMを用いたバイオイメージング」
      東レリサーチセンター 表面科学研究部 田原 寛之

 AFMは、真空から液体まで測定環境を選ばず、半導体から細胞まで幅広い材料を対象に、ナノスケールの観察が可能な分析手法である。東レリサーチセンターでは、AFMの特徴を最大限に活かすことで、多岐にわたる試料で実績を積みあげてきた。特に最近では、リガンド-レセプター反応の観察、リポソームなどの薬物キャリアの弾性率評価、DNAの構造観察などライフサイエンス分野へ注力している。
 本講演では最近のライフサイエンス分野への適用事例として、単一細胞の形状・力学物性評価や、細胞外小胞(エクソソーム)、脂質ナノ粒子(LNP)といった近年、注目度の高い薬物キャリアの観察事例について紹介する。また、特殊な形状を有する探針や表面改質を施した探針など、AFMの機能を拡張する測定オプションの適用例についても紹介する。

<講演3> 「エクソソームの製品開発に寄与する物性評価手法の開発」
      東レリサーチセンター CMC分析研究部 内久保 裕介

 エクソソームは、直径30-100 nm程度の細胞が分泌する細胞外小胞であり、組織の再生を促す成長因子や細胞間の情報伝達物質の運搬といった細胞間コミュニケーションに重要な役割を担っている。この運搬機能を利用し、エクソソームを用いたドラッグデリバリー・システムなどの製品化が期待されており、製品化に向けて、物性評価の重要性が「細胞外小胞の研究のための最小限の情報(MISEV)」で取り上げられている。
 しかしながら、エクソソームを詳細に物性評価する手法の開発は不十分な状況にある。当社では、エクソソームによる製品開発に貢献するサービスとして、エクソソームの物性評価手法の開発を進めている。本講演では、エクソソームの状態を確認するためのクライオ電顕による形態観察事例、標的細胞への選択的送達に関与していると考えられている糖鎖の解析事例、品質評価に向けたエクソソームの純度分析を中心に、当社のエクソソームの物性評価の取り組みを紹介する。

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