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データインテグリティ確保と作業効率化で安定供給を支援
文書・イベント管理システムがもたらす有用性とは
アガサ
2024年9月27日に開催されたPTJ Forum 2024(じほう主催)-産官学GMPサミット~安定供給を支える品質のありかたを考える~で、「DXによる品質・QMS向上の最新トレンド~AI活用で進化する文書・イベント管理システムと教育訓練」をテーマにアガサ株式会社代表取締役社長の鎌倉千恵美氏が登壇した。
本稿では、安定供給確保におけるデータインテグリティの重要性、同社が提供する文書管理・イベント管理システムの有用性について紹介する。
■DI確保は、安定供給実現に必要不可欠
主に、医療・ライフサイエンス向けのクラウド型文書管理システムを提供するアガサは、2015年の設立以来、多くの企業・医療機関のニーズに応え、社名の由来にもなっている同社のミッション「Aspirations for good health and life(世界中の人々の健やかな人生のために)」の実現に向けて邁進してきた。同社が提供するソリューションは、本サミットの主テーマである「安定供給を支える品質の在り方」という観点でも有用性が高い。
「安定供給に資する重要要素の1つがデータインテグリティ(DI)だと考えている。患者さんの安全性確保のために、製品の安全性や有効性に関するデータは確実に管理する必要があり、品質保証のためのデータも当然、正確でなければならない。DIが確保できなければ、規制当局から製品出荷が許可されず、安定供給が脅かされることになる」と鎌倉氏は指摘し、安定供給のためにはDI確保が大前提になることを示唆した。
さらに、「DI対策では、アナログ作業を低減できるシステム化を進めることが有効策だ。紙ベースでの管理やword/excelでの運用では、手作業によるミスや故意の改ざんの可能性が残るため、システム化することでそれらのリスクを排除し、DIを向上させることが重要。手動による作業工数を減らして効率化させる、蓄積するデータを有効活用して業務に役立てるなど、システム化のメリットは大きい」と、鎌倉氏はDI確保のみならず、作業効率化と業務改善にも寄与する利点があると改めて説明した。
■実務的観点で“使いやすさ”を重視
ユーザーの要望を解決するソリューションを提案
昨今の製薬業界を取り巻く環境を鑑みると、文書・イベント管理をシステム化するメリットは多々あるが、実際にユーザーがそのメリットを享受できるかという実務面に加え、グローバル対応も念頭に置く必要がある。
「システムに機能を追加すればできることは増えるが、逆に使いにくくなるだけでなく、トレーニングに時間がかかり、ミスも起きやすく、システム化のメリットを生かすことができなくなる。弊社は、シンプルで使いやすいユーザーインターフェース(UI)を重視している。また、グローバルな観点で設計しているため、多言語対応はもちろん、欧米の規制対応も含めたサポートが充実していることも特長」(鎌倉氏)。
すでに、製薬企業や医療機器メーカーなど、2,500法人以上の利用実績があり、グローバルでも30以上に採用されている同社のシステムは、“使いやすさ”と“グローバル対応”を両立している表れといえる。講演では、同社のシステムを導入した事例が紹介された。
「ある内資系製薬企業では、文書管理システムをGXP以外の一般文書も合わせて利用しているほか、イベント管理システムも導入いただいている。導入前は、紙文書の保管コストという経営的問題や海外当局の査察時に文書をすぐに提出できない、といった課題を抱えていたが、当社システムの『グローバル法令に適合、分かりやすい画面、日本語⇔英語切り替え機能』を評価してもらい導入いただいた。導入後は、電子署名機能を使うことで、署名のためだけの出社がなくなったことや国内外で迅速な書類確認が可能になったこと、さらに人事システムと連携して、ユーザー管理の負荷を軽減するなどの効果がみられる」と鎌倉氏は話す。
大手製薬企業から独立した企業では、元々使用していたシステムを独立後も導入しようと試みたが現場で使いこなせず、紙やword/excelでの運用に戻る、部署ごとにシステムが違うなど、全体でばらばらの運用になってしまったという課題があったという。そこで、アガサのシステムのデモンストレーションを行ったところ、IT部門・品質保証部門双方から使いやすさが評価され、導入が進み現在では、ほぼ全部門に拡大しているほか、経理の文書や契約書も管理したいとの要望に応え、システムを電子帳簿法など、製薬関連以外への法規にも対応しているとした。
そのほか、ニューヨークに本社を置くバイオテック企業で、米国と中国で80名に導入した例なども紹介されたが、いずれの例でも共通するのは、顧客の課題を捉え、解決策としてシステム活用法を提案するという同社の対応力だ。
「文書管理では、版管理の煩雑さや押印が面倒であること、紙の保管場所やコストなどの課題があるほか、イベント管理ではリアルタイムに進捗把握することの難しさなど、クライアントの悩みは共通している(図1)」と鎌倉氏は指摘する。
■3つのソリューションとAIの実装で医療アクセスの向上
同社では、クライアントの課題を解決する3つのソリューションをラインアップして支援している(図2)。
シンプルな文書管理システム「Agatha Basic」では、ファイルサーバーのような直感的操作性が特長で、GXP文書の管理が可能。顧客ごとの“組織環境”があり、その中でプロジェクトごとに“ワークスペース”をつくり、アクセス権限の設定を行う。ワークスペース内にファイルサーバーのようにフォルダをつくり、ファイルの編集や版管理、レビュー、承認などを実行することが可能である。
手順書のライフサイクル管理と教育訓練記録の「Agatha SOP」では、SOPのライフサイクルに沿って、新規作成からドラフト、レビュー、承認、教育訓練、公開、さらにはそこからの変更など、全体管理が可能。教育訓練では、記録作成や理解度テスト機能も有する。
品質イベント管理の「Agatha QMS」では、逸脱、苦情、CAPA、変更管理という4つの基本的なモジュールを組み合わせて利用が可能。CAPAの①進捗管理、②変更管理、③文書管理、④教育管理といった一連の要素を情報連携させながら、一元管理を実現する。
「従来、AIを活用するにはデータが構造化されている必要があるため、文書管理システムでは難しかったが、生成AI技術によって文書・イベント管理も一体でAIを活用することができるようになり、弊社もAI活用に取り組んでいる。AI技術により、品質向上、スピードアップ、生産性向上を支え、医薬品製造業の国際競争力を高め、医療アクセスの向上に貢献していきたいと考えている」と、鎌倉氏はAIを活用したシステムの進化についても言及した。
同社のAI実装・開発は、数年間かけて段階的に計画されており、フェーズ1にあたる2024年にChatGPTを活用した機能の開発を終え、フェーズ2の2025年には、ファイル単体だけでなくシステム全体に対しての生成AI活用、フェーズ3では顧客データを学習して、回答するファインチューニングという技術の検討を行っていく予定だとした。
時代の進展に合わせて最新技術も取り入れることで、顧客にさらなるメリットをもたらす同社の方針が、これらの取り組みからも垣間見える。同社は、今後もDIのシステム化による利点を通じ、お客様と一緒に医薬品製造業の国際競争力を高め、医療アクセスの向上に貢献していきたいとしている。
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