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わが国における遺伝子治療実用化を加速するカギとは?
第23回メルク バイオフォーラム2024開催

メルク

 ■会場風景_0.jpg
 メルクは2024年9月19日、「遺伝子治療の未来と持続可能なバイオ医薬品開発」をテーマに第23回メルク バイオフォーラム2024をホテル雅叙園東京で開催した。わが国の遺伝子治療の課題や実用化加速に向けた提言、バイオ創薬技術や次世代医薬品の開発状況など、多岐にわたる講演がプログラムされ、多くの参加者が聴講した。本レポートでは、同フォーラムのトピックを紹介する。

 

■遺伝子治療の人材育成が喫緊の課題

■岡崎氏.JPG
   岡崎 利彦 氏

 講演1では、「我が国の遺伝子治療の実用化開発の加速に向けたアカデミアの挑戦と期待」と題して、大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部 未来医療センター病院教授の岡崎利彦氏が、遺伝子治療製品の開発動向や治療に向けた大阪大学の新たなチャレンジ、現場での課題などについて解説した。

 岡崎氏は1990年代初頭の日本の遺伝子治療が世界トップレベルであったが、00年代初頭に臨床試験での死亡事例や白血病の発症を受けて暗黒時代に入った一方、17年8月に米国でキムリアが承認され、欧米や中国で遺伝子治療の開発が進んでいること、基礎研究で先行していた日本は、今では“周回遅れ”である現状について触れた。

 「なぜ日本で遺伝子治療が進まないのか?多品種小スケールの治験薬製造の担い手がいないこと、ベクターがないと臨床試験ができないことが原因である」と、岡崎氏は会場に問いかけ、その理由について述べた。

 岡崎氏が所属する未来医療センターは、革新的医療がアカデミアから生まれるケースが多いこと、それら優れた研究成果を実用化につなげる”オープンイノベーション”が注目されてきたこと、一方でアカデミア側でも優れた基礎研究を医療として実用化するために企業に橋渡し、実用化させるトランスレーショナルリサーチを推進することを目的に設立された。

 岡崎氏は、遺伝子治療開発初期における課題として、①リスク分析が困難なこと、②市場が小さいこと、また、革新的であればあるほど製薬企業の早期参画が困難であること、③製造施設や試験施設の拡充、カルタヘナ法対応など規制への対応を挙げ、「どうしたらアカデミアがウイルスベクター製造を担えるか、GMP製造の壁が高く、もがき苦しんだ」と明かした。カルタヘナ法とは、遺伝子組換え生物などを使用する際に規制措置を講じることで、生物多様性への悪影響の未然防止を図ることを目的とした法律で、日本で遺伝子治療の治験を始める場合には、同法への対応が必要となる。また、遺伝子治療の実用化にはTPP(target product profile、目標製品特性)を固めるとともに、GMP製造工程確立など多岐にわたる課題がある。

 そこで、岡崎氏が研究開発代表者となり、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和5年度「再生・細胞医療・遺伝子治療実現加速化プログラム(再生・細胞医療・遺伝子治療研究実用化支援課題(ウイルスベクター製造・提供基盤整備課題))」において採択された「再生・細胞医療・遺伝子治療研究実用化加速に向けたウイルスベクター製造・提供基盤整備に関する研究開発」によって、インフラ整備をはじめ、遺伝子治療の実用化開発に向けた包括的な支援体制の整備を進めることとなった。

 岡崎氏は、製造現場の課題の1つとして「人材育成」を掲げた。具体的には無菌操作やピペット操作における「匠」からGene & Cell Manufacturingにおけるエンジニア育成、さまざまな装置を扱える人材育成、医療機関での遺伝子治療に携わるコ・メディカルの育成と配置などを挙げ、座学や実習だけでなく、アバターを利用した疑似体験などによる技術習得の開発の必要性などにも言及した。

 「アカデミアの研究者は、基礎研究段階から試薬や機械的なものを含めて、GMP製造を意識して工程をつくり込みしないといけない。技術移転の受け手側の企業も、自社装置では小型培養槽で最適化された培養条件と同じ培養状態をスケールアップ後に再現することができない、などと言うのではなく、設備拡充や対応できる技術力をつけていただきたい。そのためにも、基礎技術要素の相互理解と共有、使用機器の要素因子の共有化、できるだけ早期からの共同研究開発の確立が重要」と、技術移転のポイントについても触れた。

 

■アカデミアと伴走する仕組みが必要

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   小野寺 雅史 氏

 講演2では、「我が国の遺伝子治療の課題とその解決策」をテーマに、国立成育医療研究センター 遺伝子細胞治療推進センター センター長の小野寺雅史氏が登壇した。講演の冒頭で、小野寺氏は「なぜ日本発の遺伝子治療が少ないのか?」と参加者に問いかけた。

 その理由として、小野寺氏は、我が国では再生医療と遺伝子治療が別々に審査されている点を挙げた。具体的には、ex vivo法は再生医療等安全確保法の下で審査され、in vivo法は臨床研究法や遺伝子治療等指針、カルタヘナ法といった複数の規制に基づいて審査される。このような煩雑な規制体制が問題であると指摘した。次に、医師主導治験を含むアカデミアが行う遺伝子治療の質が、企業治験に比べて極めて低く、非臨床試験や第1相試験で得られるデータに信頼性が担保されていない点を挙げた。このため、たとえ「条件及び期限付承認制度」が存在しても、ハートシートの不承認やコラテジェンの製造承認申請取り下げなど、制度の恩恵が国民に十分には還元されていないと指摘した。

 一方、小野寺氏は遺伝子治療用製品の開発が難しい理由についても言及した。通常、開発者は治験を開始するにあたり、開発する製品の薬理学的効果、すなわちMode of Action(MOA)を念頭に置きながら目標製品品質プロファイル(QTTP)を決定し、その達成に向けて製造工程における重要品質特性(CQA)および重要工程パラメータ(CPP)を設定する。しかし、遺伝子治療用製品では、免疫反応を含め最終的なMOAの評価はヒトでしか行えないため、非臨床試験や治験早期の段階で製造工程や規格を固定することは極めて難しいと述べた。特に、アカデミアの研究者は製品開発のプロセスに十分に精通していないため、非臨床試験や初期治験から後期治験、商業生産へ移行する際に必要となるデータや検体を適切に保管していない場合が多く、企業に開発が移行した際、製造プロセス開発が、再度、やり直しになる場合がある。このため、開発の初期段階から製造工程に関する情報をCMO/CDMOと適切に共有することが重要であると述べた。

 最後に、現在、国内製薬企業が遺伝子治療を開発する際、米FDAの査察経験を持つ海外のCMO/CDMOを選択する傾向が強いことから、アカデミアにおいても、英国政府関連団体のカタパルトや米国NIHが主体となって進めているPaVe-GTのように、国が主導してアカデミアと共に希少疾患向けの遺伝子治療薬開発に取り組む、強固な体制の構築が必要であると強く訴えた。

 
■遺伝子治療用製品の最新動向を紹介

 講演3では、タカラバイオの蝶野英人氏と田原謙一氏から、CAR-T細胞の製造期間を従来8~14日かかっていたところ、レンチウイルスベクターを用いて培養早期に遺伝子導入するSpo-T法を開発、2日間で製造でき、かつ低疲弊・高増殖の性質を示し、高い細胞傷害活性を有する細胞が得られたこと、自動培養装置とSpo-T法を組み合わせることで完全閉鎖系のCAR-T製造工程を実現したことなどが紹介された。

 講演4では、神戸大学発ベンチャーのシンプロジェンの齋藤俊介氏から、同社独自のDNA断片集積技術であるOGAB®法、ウイルスベクターの製造コストと期間の大幅削減を目指した技術「オールインワンプラスミドTM」、遺伝子治療用製品とmRNA医薬の設計からプロセス開発および品質試験までのCMC関連業務の受託サービス「遺伝子治療バイオファウンドリ®」、GMP製造パートナーとの業務提携による遺伝子治療用製品の国内開発・製造基盤の構築などを紹介した。

 講演5では、JCRファーマの薗田啓之氏から、世界初の血液脳関門通過型医薬品として21年5月に国内で発売されたイズカーゴに適用された技術「J-Brain Cargo」について紹介。現在、脳に集積するが肝臓には集積しないことで毒性を下げる研究を進めていること、さまざまな適応拡大が期待されること、それらの開発においてメルクのキット製品が効率化に活かされていることなどを紹介した。

 講演6では、メルクの小川義昭氏から、ユーザーにとって最適なターゲット固有のアフィニティー樹脂の探索から商業用生産までカバーする新しいカスタムアフィニティーレジン作成サービス「Eshmuno Fit」について紹介された。

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 講演終了後のパネルディスカッションでは、アカデミアで治験を進めるためレギュラトリー整備の必要性やベクターを扱うオペレータのトレーニング、「匠」の手法のマニュアル化、アカデミアと企業が共同でプロセス開発してGMP製造に到達する道のり、技術移転などについて活発な議論が展開された。

 

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■お問い合わせ
メルク株式会社 プロセスソリューションズ事業本部
〒153-8927 東京都目黒区下目黒1-8-1 アルコタワー5F
TEL:03-4531-1143
URL:www.merckmillipore.jp

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