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無菌プロセスにおけるファーストエア保護とCFD活用の最新動向
~EU GMP Annex 1に基づく汚染管理戦略とFranz Ziel社の取り組み~
ケルバー・ジャパン
EU GMP Annex1では、製品や製品接触面を汚染から保護する「ファーストエア(First Air)」の維持が、無菌性保証における重要な要素として位置付けられている。
近年、ファーストエアインテグリティ(First Air Integrity)を科学的に評価するため、CFD解析や気流可視化試験などを活用した予防的な気流設計・評価が注目されている。この分野では、ケルバーの戦略的パートナーであるFranz Ziel社のGMP Complianceチームが、英国PHSS(Pharmaceutical & Healthcare Sciences Society)の専門家と共同で、保護気流およびファーストエアインテグリティに関する考え方を体系的に検討し、その研究成果をEuropean Journal of Parenteral & Pharmaceutical Sciences誌に発表するなど、業界における技術的な議論にも貢献している。
■ファーストエアとファーストエアインテグリティ
GMPに準拠した無菌プロセスでは、製品の無菌性を確保するために高度な汚染管理が求められる。その中核を成すのが「ファーストエア」の概念である。ファーストエアとは、HEPAフィルタから供給され、遮られることなく製品や製品接触面へ到達する清浄空気を指す。
EU GMP Annex1では、無菌製造における重要な保護要素として位置付けられており、開放バイアル、プレフィルドシリンジ、カートリッジ、充填ポイント、ストッパー供給経路などの重要エリアを、粒子や微生物による汚染から守る役割を担っている。
近年のEU GMP Annex1改訂では、無菌性保証の考え方が従来の結果確認型管理から、Quality by Design(QbD)に基づく予防的アプローチへと進化。設備設計段階から汚染リスクを理解し、科学的根拠に基づいて制御することが求められており、その実現のために保護気流の設計と評価が重要視されている。
ファーストエアを維持するためには、HEPAフィルタから重要表面まで一方向気流(UDAF:Unidirectional Airflow)が連続して維持される必要がある。乱流を完全に排除することが目的ではなく、低グレード空気の巻き込みや汚染リスクを生じさせないよう適切に制御することが重要である。そのため、充填ノズル、搬送装置、ロボットアーム、グローブポートなどの設備構成要素は、気流への影響を考慮して設計される必要がある。
ファーストエアインテグリティを検証する主な手法として、スモークスタディ(気流可視化試験)、Computational Fluid Dynamics(CFD:数値流体力学)、Limitation of Risk(LR)法が挙げられる(図1)。スモークスタディは、気流の乱れや停滞部の有無を評価する一方、CFDは数学モデルを用いて設備内部の気流挙動をシミュレーションする技術で、気流速度や方向、乱流などを詳細に解析することが可能である。LR法では、粒子挙動を定量的に追跡し、製品への汚染リスクを評価する。ファーストエアインテグリティを維持するためには、一方向気流(UDAF)の設計だけでなく、その状態を継続的に監視・評価することが重要である。

■CFD活用による気流解析と設計最適化事例
特に、近年注目を集めているのがCFDの活用である。CFDはクリーンルーム、アイソレータ、RABS、無菌充填設備などの設計段階で適用され、設備導入前に気流挙動を可視化できる。スモークスタディだけでは、確認が困難な高風速領域や密閉空間内部の流れ、設備周辺の局所的な乱流、デッド ゾーン(滞留領域)などを解析できる点が大きな利点である。
EU GMP Annex1の観点からは、CFDはファーストエアインテグリティおよびUDAF維持の妥当性を科学的に評価するための有効な手段となる。気流方向や速度分布を解析することで、製品および製品接触面が継続的にファーストエアで覆われているかを確認できる。また、設計変更の効果を事前に検証できるため、Contamination Control Strategy(CCS)の構築を強力に支援する。
Franz Ziel社では、CFD解析によって得られた気流速度、方向、乱流や再循環領域などを総合的に評価し、その結果を設備設計や設計改善に反映している。ある無菌製造設備では、工程間を仕切る低い仕切り板(パーティション)が設置されていたが、マウスホール部からの横方向気流によって、流れの剥離と小規模な再循環領域が形成され、局所的な乱流が発生していることが判明した。
そこで、パーティションを撤去したところ、製品搬送ライン上に安定したUDAFが形成され、再循環領域も解消した結果、ファーストエア保護が改善され、設備完成後の改造や再適格性評価を回避することができた(図2)。
ただし、CFDはあくまで予測・設計支援ツールで、GMP適格性評価を代替するものではない。最終的な確認はスモークスタディなどの実機評価によって行う必要がある。CFDによる予測結果とスモークスタディによる実測結果を組み合わせることで、より信頼性の高い気流設計と汚染管理が実現できる。

A: パーティションにより気流の剥離と局所的な再循環域が発生
B: CFD解析結果を基にパーテーションを撤去することで、安定した一方向気流(UDAF)が形成され、ファーストエアによる製品保護を実現
■Franz Zielの無菌プロセステクノロジー
環境モニタリングでは、「Second Air Monitoring(セカンドエアモニタリング)」の概念が注目されている。これはファーストエアが、製品を保護した後の下流側気流を評価する考え方であり、ロボット周辺や排気側、再循環が発生しやすい領域のリスク評価を可能にする。加えて、粒子数、風速、差圧などをリアルタイムで監視するシステムとの統合により、異常を早期に検知する予防的なモニタリングへの発展も期待されている。
Franz Ziel社は、セカンドエアモニタリングを含む研究成果を2025年に査読論文として発表し、ファーストエア保護と今後の環境モニタリングに関する技術的な議論に貢献している。
同社は1982年の創業以来、アイソレータやRABSの開発を通じて無菌製造分野で発展し、2003年にはコンテインメントアイソレータ、2011年には無菌・高活性物質対応アイソレータラインを開発。現在では、コンテインメントやアイソレータ技術、バイオ除染技術および無菌プロセス設計とともに、自社微生物ラボの運営やVHPバイオ除染技術の開発、GMPおよび無菌製造の専門部門を活用した設計・バリデーション支援までを提供。2023年には、日本市場への初号機納入を実現し、国内製薬企業に対してアイソレータ、バイオ除染、無菌プロセス設計に関する提案活動を進めている。
また、プロジェクトの複雑さに応じた体系的なエンジニアリング体制(標準製品からフルカスタム設計まで)を整備し、顧客要求を技術仕様に落とし込むプロジェクトエンジニアリングチームが、専任で対応。こうした体制により、顧客のCCS構築を総合的にサポートしている。

■日本国内の無菌製造をサポートするケルバー・ジャパン
無菌製造における汚染管理は、設備設計、CFD解析、スモークスタディ、リアルタイム環境モニタリング、そしてセカンドエアモニタリングを統合した総合的なアプローチへと進化している。
ファーストエアインテグリティを継続的に維持し、その有効性を科学的に証明していくことが、EU GMP Annex1時代における無菌製造の重要な課題となっている。CFDをはじめとする評価技術とモニタリング技術の活用は、その実現を支える重要な基盤として今後さらに発展していくと考えられる。
こうした中、ケルバー・ジャパンとFranz Ziel社は、戦略的パートナー契約として、日本市場における製品提案から技術相談、導入支援まで、多くの製薬企業の無菌製造プロジェクトをサポートしている。
また、10月22~23日に大阪で開催される「PDA無菌シンポジウム2026」において、ケルバー・ジャパンが Franz Zielの無菌製造技術について紹介する予定である。 会場では、「Insight Ziel No.3」日本語版も配布する。 資料をご希望の方は、ケルバー・ジャパン(pharma.te.jpn@koerber.com)までお問い合わせいただきたい。
※本稿に関する担当窓口
長谷川 純(Jun Hasegawa)
E-mail:jun.hasegawa@koerber.com
■お問い合わせ
ケルバー・ジャパン株式会社
〒104-0032 東京都中央区八丁堀1-11-12
TEL:03-6275-2347
E-mail:pharma.te.jpn@koerber.com
URL:https://www.koerber-pharma.jp






