ファームテクジャパン 2026年1月号 紹介
“最安定晶”の不安に科学で挑む
結晶多形スクリーニング×in silicoの最適解

 PHARM TECH JAPAN2026年1月号から新連載「分析・解析UpToDate」が始まります。CMCにかかわる新しい分析技術を、各分野の先駆者のみなさまにご紹介いただきます。ここでは、連載初回となる「医薬品の結晶多形スクリーニングにおけるin silico手法の活用とその最適なタイミング」の内容について紹介します。


なぜ今、in silicoか—“さらなる安定晶”という恐怖に備える

 原薬の結晶多形は溶解性・安定性・製造適性を左右し、開発の成否を左右します。実験スクリーニングだけでは“あとからより安定な結晶形が現れる”リスクを完全には消せません。記事は、CSP(結晶構造予測)を受託活用する潮流と限界を整理し、計算と実験が乖離しがちな課題を俯瞰します。

解決策は“タイミング”—実験→Landscape化→in silico照会

 著者らは、初期の実験的多形スクリーニングで安定性・物性を評価し、“準安定晶も含む全体像(Landscape)”を可視化した上で、in silicoの安定晶探索を実行する手順を提案。実験で得た構造情報を用いて計算結果をバリデートし、未観測の安定多形の“存在可能性”を合理的に評価するアプローチです。この順序により、計算と実験の往復でリスク評価の信頼性が高まります。

ケース①室温域で現行B晶が最安定と判断

 治験直前に新規B晶が出現し不安が高まるなか、競合スラリーや溶媒和物の挙動を確認してLandscapeを構築。続いて、フラグメント化→力場最適化→結晶構造生成→エネルギー順位付け→DFT最適化→温度依存評価というワークフローでCSPを実施。結果、0–200K付近では別解が上位でも、室温以上ではB晶が最安定と予測。実製造でも200kg×3ロットすべてB晶を得て、開発リスクを低減しました。

ケース② “二股水素結合”を含む共結晶でも検証

 B晶の単結晶構造に珍しい二股水素結合(N–H–F)が観察され、将来的な相転移リスクを懸念。COSMO-RS+機械学習でコフォーマーを仮想選定し実験検証も行いましたが、決め手に欠けたためCSPへシフト。その結果、0Kから室温以上までRank1(=B晶)を最安定と予測し、約22kgの実製造でもB晶を安定確保。共結晶の固有複雑性に対しても、実験結果を踏まえたin silicoの“事前検証”が有効であることを示しました。

“実験と計算の融合”が最短距離
 結晶多形スクリーニングでのin silico活用は拡大必至。ただし鍵は“いつ使うか”。本稿は、実験で得た構造情報を起点にCSPでリスクを定量化し、溶解度や温度依存の視点も交えて開発意思決定を下す、実践的なワークフローを提示します。“最安定晶の不安”を科学的に管理したい読者に、確かな指針を与える一編です。

 

見どころ

  • “実験→in silico”の最適タイミング:Landscape化の後にCSPで照会し、存在可能性を科学的に評価。
  • 温度を考慮した安定性判断:室温域での相対自由エネルギー評価で意思決定を後押し。
  • 共結晶・高自由度分子にも適用:二股水素結合や高自由度でもB晶最安定を予測し実製造で検証。
  • “不安”をマネージする実務:溶解度・吸収性への影響まで視野に、リスク低減/管理の設計論を提示。

 

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