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世界初となる赤外線を用いた有機化合物結晶探索サービスを展開
『特許戦略・リスクマネジメント・価値ある結晶形の析出』の3つの価値で医薬品開発に貢献
NGKフィルテック/日本ガイシ
結晶多型の把握は、よりよい製品開発や市販後の製造トラブル回避、特許戦略といった面で重要課題となっており、結晶探索のスピードアップ、精度向上が期待されている。
2025年1月22日より配信された「PHARM TECH JAPAN ONLINE」WEBセミナーに登壇した日本ガイシグループのNGKフィルテック株式会社の営業部 東京営業所所長代理の佐藤峻一氏は、日本ガイシグループの有する製薬関連設備を紹介した。また、日本ガイシ株式会社 NV推進本部 CN事業開発ライフサイエンスグループ マネージャーの福田聖三氏は『赤外線を用いた有機化合物結晶探索サービス』について、事例とともに技術を解説した。
■製薬用水、セラミック膜、グラスライニング 多方面で最新技術を提供
佐藤氏は、日本ガイシグループの有する製薬関連設備を紹介した。NGKフィルテックは日米欧の薬局方に準拠した製薬用水設備を提供している(図1)。そのなかで新しく取り組むのが、膜法注射用水システム(超ろ過法)である。2017年の欧州薬局方の改正に伴い日米欧で認められた技術で、従来の蒸留法に比べてコストや設置スペース、エネルギー消費量、CO2排出量を削減できるようになった。同社では安定的な稼働を重視し、自動SIPシステム、自動エアリークテスト機能を設けるほか、最適な膜交換時期の提案も行う。また、不具合発生時の原因究明を迅速にするシステムレコーダー機能を標準搭載し、省人化に向けたデジタル技術の検証も重ねている。
同社のもう1つの主要製品がセラミック膜である。孔径2nm~2μmをラインアップしており、菌やたんぱく質、ナノ粒子などの製品を精製、濃縮、異物除去などの用途で使用される。耐熱性・耐食性・耐圧性に優れている点が特長で、強酸・強アルカリ・有機溶剤が使用可能なため、目詰まりしている物質を溶かして再利用することができるほか、高圧による濃縮が可能で、製品の回収率向上に貢献する。菌体分離に活用すれば、培養しながら目的物質を抜き出す連続培養が可能になり、生産効率を約2倍にすることができるという。
続いて佐藤氏は、日本ガイシグループのNGKケミテックが取り扱うグラスライニング(GL)機器について紹介した。各種薬液を混合し、化学反応させるプロセスで使用される。機器の内面に焼き付けるグラスにも複数の種類があり、オールマイティに使用可能な標準GLのほか、帯電防止GL、ナトリウムフリーGL、高視認性GL、高熱伝導GLの4種類の高機能GLに加え、顧客のニーズに合わせて融合させるマルチGLも新たに提供開始した。1ユニット型のラボ装置であるプロセスユニットラボは、生産設備を相似形状で小型化させた反応装置であり、各種プロセス開発において実生産設備へのスケールアップを容易にする。ラボスケールとパイロット設備の2段階スケールアップが不要となるため、研究設備コストや検討時間を削減する。貸出機では、高機能を融合した反応装置ユニットを試すことが可能だ。
■世界初の赤外線を用いた結晶探索
福田氏は、世界初の赤外線を用いた有機化合物結晶探索サービスを紹介した。日本ガイシグループの技術力を結集し、特定波長の赤外線照射が可能となる晶析装置を開発。これを用いることでこれまで発見されていなかった結晶形の析出が期待されると言う。
サービスのポイントとなる晶析装置には、日本ガイシ独自の赤外線放射板(MIM選択放射版)が組み込まれ、これから放射される特定波長の赤外線が溶媒を蒸発させることで晶析を行う。ここで課題になるのが、赤外線の波長制御である。従来技術では赤外域での精密な波長制御は極めて困難であったが、同社はメタマテリアル技術を用いて光の波長以下のサイズの金属構造を有するMIM選択放射板の開発に成功。これにより精密な赤外線波長制御を可能にした(図2)。
晶析に影響を与える重要な要素として、溶媒の種類、溶液温度、溶液濃度などが挙げられるが、同社はこれらに『特定波長の赤外線』が新たに加わると考えている。福田氏は、「赤外線は化合物そのものだけでなく溶媒にも影響を及ぼすため、過飽和度推移の自由度を大きく拡大させます。その結果、従来法では析出が困難であると思われる結晶形の析出も期待されます」と本手法の有用性を説明した。
それでは、MIM選択放射板による特定波長の赤外線放射が結晶探索にどのような効果をもたらすのだろうか。同社は赤外線が官能基を励起させること、また官能基の種類によって赤外線の吸収帯が異なることに着目した。MIM選択放射板による特定波長の赤外線照射はで各対象化合物の特定の官能基を選択的に励起させることで、析出する結晶形を変化させること可能性があると同社は考えている。これは言い換えれば、特定官能基が関与する分子間結合の制御可能性を高められる可能性があるということになる。例えば、カルボキシル基あるいはヒドロキシ基が作る水素結合ペアがある結晶形の結晶核のベースとなる場合があるため、これらの官能基を選択励起すれば水素結合が乖離して別の結晶形になるのではないかというものである。この仮説が事実であれば、新たな結晶形発見の可能性がさらに広がることになる。
同社の結晶探索の具体的な事例として、福田氏はリトナビルを用いた赤外線照射の有無が晶析結果に与える影響について紹介した。この実験において赤外線照射なしの条件では準安定形の結晶形Ⅰが優先的に析出し、赤外線照射ありの条件(各官能基の赤外線吸収帯に応じた複数の波長を使用)では、使用した波長によって析出した結晶形が異なり、ある波長では最安定とされる結晶形Ⅱが析出した。この結果は赤外の波長の違いが結晶形に影響を及ぼすことを示すものである。(図3)。このほかにインドメタシン、フロセミドにおいて、既知の全ての結晶形*1だけでなく未知の結晶形も得られた事例を紹介した。*1ケンブリッジ結晶構造データベース(CSD)でXRDデータの報告がある結晶形
■2025年、結晶形予測ソフトの稼働を開始予定
日本ガイシでは結晶探索サービスのさらなる向上を目指して、結晶形予測ソフトを開発している。このソフトは、ある結晶形がどのような実験条件で析出するのかということを予測するものだ。同社の幅広いノウハウと古典的核生成理論を組み合わせ、結晶析出過程をトレース可能なソフトを実現した。放射・吸収スペクトルをはじめ、サンプル液の温度・濃度推移や各結晶形の析出タイミングなどを、リアルに可視化することができる。実験データと照合しつつ最適化し、将来的には当該データによる機械学習にて新規化合物の結晶形予測につなげる。2026年度中に本格稼働開始予定である。
福田氏は、今回紹介した有機化合物の結晶探索サービスの価値について、新たな結晶形の発見が強固な特許網を可能にする『知財戦略への貢献』、多様な結晶形の把握でトラブルを未然に回避する『リスクマネジメント』、未知の結晶形発見の可能性という『価値ある結晶形の析出』の3つと述べ、これらの価値によって医薬品開発に貢献したいとして講演を終えた。
■お問い合わせ
NGKフィルテック株式会社 東京営業所
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