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あゆみ製薬の取り組みで見えた
医薬品生産現場でのバーコードシステムの導入効果
IDEC AUTO-ID SOLUTIONS
生命関連製品であるがゆえに安定供給が命題となる医薬品は、生産から出荷に至るまで適切な品質を担保することが必須とされる。しかし、工場内で手作業を要する工程があれば人為的ミスが起こる可能性があり、原料の取り違えによって品質に影響が出てしまった事例も過去には存在する。製薬各社は、堅牢な工程設計や作業フローの構築に努めているが、その方策の1つに基幹システムおよびMES と連携したバーコードシステムの活用で手作業を減らし、人為的ミスを低減する手法がある。
本稿では、システム導入によって作業者の誤作業防止と作業効率アップに大きな効果を上げているあゆみ製薬の取り組みについて、同社執行役員ロジスティック&システム本部本部長の細川民雄氏に話を聞いた。
■エクセル管理からの脱却へ
あゆみ製薬は、国内に3つの生産拠点(瀬戸工場、多摩川工場、厚木プラント)を有し、解熱鎮痛剤やペニシリン製剤を中心とした製造を行っている。広く汎用される製品であるため生産量も多く、誤作業防止という品質確保上の前提に加え、いかに作業効率を上げて生産性を向上させるかが課題になっていた。
「以前は、IT 化がなかなか進んでいない実情がありました。作業の多くがエクセルを用いたマニュアル操作といった様相で、それゆえ作業量も多く、人為的ミス防止のためのチェックにも多大な労力がかかっていました」と細川氏は当時を振り返る。
その後、各工場にも基幹システムであるSAP およびMES を導入して徐々に自動化が推し進められて行く中、従業員の手作業による逸脱リスクをさらに低減することを目的に、IDEC AUTO-ID SOLUTIONS 社と共同で設計・開発したバーコードによる自動認識システム「Handy terminal MES※」を2016 年より導入開始した。
※今後、IDEC AUTO-ID SOLUTIONS 社によるパッケージ化に伴い、名称変更の可能性あり
「製造指図が基幹システムから出されるようになっても、ピッキングや原料投入時の確認には作業者の手作業が残っており、誤作業の可能性が排除できない状況でした。ただ、作業者ももちろん間違えたくて間違えるわけではありません。そこでまずは、ハンディデバイスによるバーコード識別システムを一部で導入し、ミス防止と効率向上を図りました」(細川氏)。
導入したシステムは、発行された製造指図に対して、対象となる構成品目をバーコードと無線LAN でリアルタイムにデータベースと照合し、間違いがあればアラートが発せられるという仕組みである(図)。手書きやエクセルで記載していく膨大な作業が自動化されることで、大幅な業務効率化と人為的ミス排除につながるうえ、記録が「監査証跡ログデータ」として残るため、工程の堅牢性が高まることになる。
■システム導入により現場の意識に変化
当初は、現場がどのように新システムを活用できるかという不透明性も考慮し、まずは一部で限定的に導入したが、その効果は大きく、現場からの反応も非常にポジティブだったという。
「まず、ミニマムの機能を導入しました。システムの特長を端的に言うと、ハンディで帳票やラベルのバーコードを読むことで、目視で確認するという行為を自動化するというものです。これを実際に使用してみると、現場はそんなことできるのかという反応でした。しかし、その後は他の工程でも活用したいという声が次々と上がってくるようになりました」と細川氏は話す。
その後、現場からの要望に応えるように、対象工程や機能を年々拡大し、すべての生産拠点で導入を進めていった。同システムは、すでにある基幹システムやMES の下に組み込んでいく形になり、ミニマム機能では200 万円前後で導入可能だったため、まずは使ってみるということを起点に、段階的に範囲を広げていくことが可能だったという。
「システムの有用性が現場にうまく伝わったことで、これをトリガーに作業者一人ひとりのリテラシーが上がったことは、導入の大きな意義だったと感じています。よく工場に出向いて、現場の状況を把握するよう努めているのですが、作業者が直接、次はこの作業でシステムを使いたいという声を届けてくれるようになりました。作業の様子をヒアリングすることで、どこにリスクが潜んでいるのか、システムでどう解決できるかという課題解決につなげていくサイクルができ上がったのは、システム導入が契機になっているのは間違いありません」(細川氏)。
細川氏が直接、現場の声をシステム運用に反映する仕組みを整えることで、現場まで一体となって業務の質向上に資するシステムを使いこなす意識が生まれ、同社の優れた企業文化醸成につながっていることが、システム導入の大きな効果になった。
■規制対応強化としても重要なシステム
本システムをGMP上の要件に照らして考えると、いつ、誰が、何を実行したのかが自動で記録され、監査証跡として発行されるという点は、データインテグリティ対応の意味でも効果が大きい。また、導入時には当然バリデーションも必要となるが、同社では、作業者の教育訓練までを含めたバリデーションパッケージを備え、IDEC AUTO-ID SOLUTIONS 社もバリデーションに対応するドキュメントを提供可能であるため、規制適合の観点でも万全の体制を整えているという。
このように業務効率化と作業ミス低減、さらに規制対応強化という多くのメリットをもたらすシステムだが、細川氏は「現在は、生産以外にも試験、保管、出荷まで対象を広げています。今も現場からはさまざまな提案や要望が上がってきていますので、それらをうまく拾い上げ、システムを活用しながら組織全体の改善につなげていきたいと思っています」と今後の展望について語った。
現状の基幹システムに合わせてミニマム機能から導入でき、実情に合わせて対象を広げていくというあゆみ製薬の取り組みは、コスト合理化や組織内への運用効果浸透を考慮すると、非常に良いモデルケースの1つだといえるだろう。
■お問い合わせ
IDEC AUTO-ID SOLUTIONS 株式会社 システム部
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