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シールレスビーズミル処理+「FL法」でナノ製剤化の高効率・高品質を実現
フロイント産業

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 西澤 良之 氏

 近年、医薬品候補化合物の約80%以上が難水溶性といわれており、経口投与後の吸収率が悪いなど、医薬品開発において種々の課題は少なくない。
 これらの課題を解決すべく、塩野義製薬と広島メタル&マシナリーが共同でタンク一体型シールレスビーズミル「アペックスミルF&M」を開発。さらに、同装置を販売するフロイント産業が乾燥工程をなくす「FL法」を提案するなど、3社の強みを最大限に発揮している。フロイント産業 浜松テクニカルセンターの西澤良之氏に、汎用機である流動層造粒機を用いたナノ製剤化について話を聞いた。

 

■コンタミレスを実現したナノ粉砕技術「アペックスミルF&M」とは

 「湿式ビーズミル」は、スラリー中のビーズと目的粒子を撹拌によって衝突させることで粉砕・分散させる装置である。コンパクト設計が可能で、シャープな粒度分布を持ったサンプルが得られることから微粉砕において汎用されている。しかし、①ビーズ同士の衝突および部分摩擦による金属コンタミの発生、②外部から異物侵入を防ぐ軸封装置であるメカニカルシールからの金属コンタミ発生および分解洗浄作業の煩雑化、③スラリーへのシール液混入などの課題があった。

 一方で、難溶解性化合物の溶解性改善手法の1つである微粒化では、ダナゾールのラット経口投与実験で、8μmの原薬を200nm以下にすることで最高血中濃度が約20倍、血中薬物濃度時間曲線下面積が約13倍になることが報告されている1)

  そこで、製剤化・粉砕ノウハウをもつ塩野義製薬とビーズミル開発ノウハウをもつ装置メーカーの広島メタル&マシナリーは、製剤方法によるソフト面と装置条件最適化のハード面の観点から、医薬品への金属コンタミを防止し、ビーズミルによる効率的なコンタミレスナノ粉砕技術の開発に取り組むこととなり、「アペックスミルF&M」の開発に至った。

 このことから、ビーズ材質は靭性が高く、摩耗し難いジルコニアを選択。さらに、ジルコニアビーズは酸性およびアルカリ条件下において金属溶出量が増加することが認められたことから、溶出抑制において最適なpH範囲が6~8であることがわかった。一方で、装置側ではシールレス機を開発してシール部からのコンタミ防止と洗浄性の向上を図るとともに、周速を4m/s以下の中速から低速、ビーズ径を0.2~0.5㎜以下の小径から中径、ビーズ充填率を75%以下、原料濃度を40%とするなど装置運転条件のパラメーターを最適化させることで、スラリーあたりのコンタミ量は0.73㎎/ℓと、200nm以下への粉砕において金属コンタミは従来法の30分の1に抑制され、処理速度も濃度換算で1.6倍とすることに成功した。

 

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 さらに、モータを回転軸に直結させるダイレクトドライブ方式を採用することで、ベルトからの粉塵発生も防止している。また、開発されたGMP対応の「アペックスミルF&M」は縦型で、低速運転でも原料のショートパス(ビーズが全体に行き渡らずに未処理スラリーが排出され処理効率が下がること)がなく、短時間でナノ粉砕が可能である。この「アペックスミルF&M」の粉砕技術であるコンタミレスナノ粉砕技術は、その新規性、実用性、社会における貢献度の観点から、2023年製剤機械技術学会の仲井賞を受賞している。
※参考文献 1)Sumit Kurmer, et al, Pharm Res(2015) 32:1694-1703

 

■乾燥工程で再凝集させずに、ナノ製剤化へ

 「アペックスミルF&M」は湿式粉砕で、スラリー処理をしており、液体状態において再凝集を防止し、分散状態を保つことができる。しかし、医薬品、特に経口製剤として活用するためには、被粉砕薬物を乾燥させて回収する必要がある。乾燥工程でスラリーから水分を除去する方法によっては、ナノ粒子に粉砕したものが再凝集するなど、粉砕効果が半減してしまう課題があった。これを解決するため、広島メタル&マシナリー社は、乾燥部分を流動層造粒機のプロであるフロイント産業にサポートを依頼したという。

 フロイント産業では、コンタミを抑制したナノ粉砕技術によって得られた薬物の利用方法について、汎用の流動層造粒機を用いて、効率良く被粉砕薬物を回収する方法と製剤化することを検討した。一例として、フェニトインを25㎎含有する錠剤をモデルに、原体および回収方法の異なる約0.2μmの粉砕品を用いて錠剤を作製し、溶出挙動について比較した。錠剤は、各検体ともに硬度60~70Nで調製し、5分以内に崩壊するように必要に応じて崩壊剤を添加した。

 

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 打錠末は、①FL(200M乳糖を流動層造粒機に仕込み、流動環境下で粉砕処理液(スラリー)を噴霧しながら造粒し、薬物含有の打錠末を調製、得られた打錠末に滑沢剤を混合して打錠)、②SD(粉砕処理液を噴霧乾燥して粉砕薬物を回収し、造粒乳糖を用いて直接打錠。錠剤物性から打錠処方に崩壊剤を添加)、③Bulk(造粒乳糖を用いて未粉砕薬物を直接打錠。崩壊剤も添加)の3種類とした。その各検体からフェニトインの溶出挙動を確認するため、パドル法50回転、精製水900mLで溶出試験を行ったところ、粉砕薬物を用いることで、見かけの溶出率の改善が認められ、流動層造粒法により粉砕薬物を回収し、打錠用顆粒を製することで崩壊性の良い錠剤を得ることができたという。さらに、この錠剤からの薬物溶出は速やかであり、90%溶出時間はおよそ20分であったという。
 

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 「ビーズミルによる粉砕スラリーを流動層造粒工程でスプレーし、適当な賦形剤に粉砕薬物を担持させ、打錠用顆粒を調製する手法であるFL法は、乾燥工程を軽減させ、打錠性の良好な造粒物を得られ、崩壊性に優れた錠剤を作製できることが利点。流動層造粒機を用いて簡単に高品質の顆粒を得ることができるので、サブミクロンからナノ粉砕薬物の製剤化手法としてご活用いただきたい」(西澤氏)。

 製剤、粉砕、乾燥のプロが集結することで、難溶解性化合物の課題解決に向けた新たな一歩が踏み出された。今後の協業成果に大きな期待が寄せられている。

 

■フロイントグループのメディアサイト「FREUND KNOWLEDGE OCEAN

 


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フロイント産業株式会社 機械事業本部 
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