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ADCs(抗体薬物複合体)とは-
がんとの闘いの最前線における武装抗体
ザルトリウス・ジャパン
Grand View Research社のレポートによると、抗体薬物複合体 (ADCs) の市場規模が2030年までに229 億ドルに達すると推定されており、バイオ医薬品の中でも最も急成長している分野の1つです。この成長の主な要因は、ADCsの標的であるがんの世界的な増加です。本稿では、患者の命を救う薬を提供するバイオ医薬品企業の分析技術の動向と、それら研究開発を支援しているザルトリウス・ジャパンの製品を織り交ぜながら紹介します。
■従来の化学療法における課題と抗体薬物複合体 (ADCs)
治療のゴールは、健康な組織を温存しながら病気を治療することですが、これは常に可能であるとは限りません。例えば、急速に分裂するがん細胞治療に使用される従来の化学療法は、分裂する他の細胞も標的としてしまうため、脱毛、疲労、その他の副作用を引き起こします。モノクローナル抗体 (mAb) 技術と代替抗体モダリティの進歩が、健康な組織への細胞毒性を最小限に抑えた新世代の強力な抗がん剤への扉を開きました。
ADCsは、3つの構成要素からなる修飾抗体です。mAb、共有結合リンカーおよび細胞障害性薬剤ペイロードです。mAbの特異性を利用することにより、ADCsは特定の細胞表面タンパクマーカーを発現するがん細胞に細胞傷害性薬剤ペイロードを直接届けることができます。
ADCsの作用メカニズムは、①mAbの細胞特異的表面タンパクへの結合、②ADCs全体の内在化(細胞内移行)、細胞傷害性薬剤の細胞内への放出による標的細胞の死滅─の2つのステージからなります。がん細胞を正確に標的化できることで、ADCsは最も急成長している抗がん剤の1つとなり、乳がん、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫がんの治療に使用されています。
■ADCsの特性評価
ADCsは、構造的に複雑な分子であり、開発プロセスにおいて徹底的な特性評価が求められます。ADCsの特性評価には、液体クロマトグラフィー、電気泳動、質量分析など、一般的な分析方法を用いるのはもちろんのこと、生物物理学的情報および物質の機能情報を加えるための分析方法と組み合わせる必要があります。
ADCsの開発における最大の挑戦の1つは、細胞傷害性薬剤がmAbに正しく接続する共有結合リンカーを開発することです。共有結合リンカーの化学的性質は、ADCs全体の構造に影響を与える可能性があるため、安定性、特異性、結合およびその他の重要なADCsの特性にも影響を与えます。
共有結合リンカーの適性を評価して最適化するには、詳細な反応速度論的(カイネティクス)研究が必要となります。ADCsの特性評価において、蛍光ラベルを使わないラベルフリー検出法による分子間相互作用測定には多くの利点があります。この方法は、光学ベースのバイオセンサーを使用することで、蛍光検出ラベルを使用せずに結合反応をシグナルに変換します。これにより、蛍光ラベルに起因する実験上の不安定さに影響を受けず、より生物学的に関連性の高いデータをもたらします。
ザルトリウスのOctetⓇ生体分子間相互作用解析システム(BLI) では、一般的なラベルフリー技術の1つを利用することができます。このプラットフォームの使用でADCsとHER2 受容体などの標的タンパクとの間の結合動態をリアルタイムで研究できます。
OctetⓇは、dip-and-readアッセイ形式を使用します。 ADCsまたは抗原のいずれかをバイオセンサー上に固定し、結合標的の濃度が上昇する環境に浸漬されることで、スピーディーに用量反応曲線が得られます。
■抗体依存性細胞傷害(ADCC)の研究
治療用モノクローナル抗体(mAbs)の作用メカニズムのいくつかは、免疫エフェクター細胞の表面に発現するFcガンマ受容体 (FcγRs) への結合を介して開始されます。 mAbsやADCsなどの誘導体が FcγRsに結合する能力は、その安全性と有効性に大きな影響を与える可能性があるため、FcγRsとの相互作用を分析し、機能的な結果を理解することがバイオ医薬品の開発には不可欠です。抗体依存性細胞傷害 (ADCC)は、標的細胞に結合した抗体がFcγRsを介してナチュラルキラー (NK) 細胞と結合し、細胞溶解を引き起こす自然な免疫応答です。
ザルトリウスのiQueⓇ超高速フローサイトメトリープラットフォームを使用すると、従来のフローサイトメーターよりもはるかに短い時間でADCC機能を分析できます。 分析のスピードアップに加えて、iQueⓇが備える十分に検証されたナNK細胞用プロファイリングキットと複雑なデータセットを分析するための強力なツールの使用で、1回のアッセイでセルヘルス、機能およびサイトカイン放出をより簡単に評価することができます。
■標的細胞におけるリアルタイム細胞内移行と細胞障害
細胞傷害性薬剤ペイロードの細胞内移行と切り離しは、ADCs作用の最終段階です。 フローサイトメトリー、ELISA、顕微鏡などの一般的なエンドポイントアッセイ技術は、細胞内移行などの時間に依存する作用の詳細な動態分析には適していません。
ザルトリウスのIncucyteⓇ生細胞解析システムは、細胞動態の経時的な視覚化および定量化が安心して利用できる方法として確立されたプラットフォームです。有効性が検証されたpH感受性色素を使用すると、ADCsの細胞内移行がリソソームの低pH環境下において、色素の蛍光発光としてリアルタイムに観察できます。
生物物理学的および機能的評価は、ADCsを含む生物製剤開発の中核部分です。細胞およびタンパク質を分析する先進的なザルトリウスのハイスループットシステムには、作業ステップ数を削減し、バイオ医薬品開発の時間の短縮に貢献します。
■第25回インターフェックスWeek 東京に出展
当社は、2023年7月5日(水)~7日(金)東京ビッグサイトで開催されるバイオ医薬EXPOに出展いたします。ぜひ、本稿でご紹介した製品を会場で直接、ご覧ください。ブースNo.32-26でお待ちしています。
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