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多様なモダリティに対応する最新分析技術~質量分析計を中心に~
SCIEX

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  建田 潮 氏

 
 開発競争が激化する新規モダリティの開発では、正確、迅速な分析がカギとなる。SCIEXは、同社がグローバルリーダーとして業界を牽引する液体クロマトグラフィー質量分析装置およびキャピラリー電気泳動において、新規モダリティの分析ニーズに応える新技術を提供する。
 2022年9月に開催したファームテクジャパンオンラインWEBセミナーで、SCIEX 市場開発マネージャー 創薬/研究分野担当の建田潮氏が、最新技術による新たな分析の可能性について講演した。

 

■新規モダリティの分析ニーズに応える技術を提供

 モダリティの多様化とともに、分析ニーズが広がっている(図1)。SCIEXが『ZenoTOF7600』に搭載したEAD(電子励起解離)は、抗体医薬品の特性解析を深化させる。

 

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図1

 EADのうちの1つの技術ECD(電子捕獲解離)は、化合物に電子を導入することによって発生するラディカルエネルギーを利用して解離を起こす手法である。ペプチドの解析例では、ECDで得られたスペクトルは、従来技術のCIDのものに比べて圧倒的にクリアなものであった(図2)。CIDでは構造の弱い側鎖部分のフラグメントもみられるが、ECDではアミノ酸配列に従ったフラグメントのみが検出されている。つまり、中分子や抗体医薬品解析において、非常に判読しやすいスペクトルが得られる。また、『ZenoTOF7600』システムに搭載されたEADは分析の高速化、再現性も向上させている。

 

●図2.png
図2

 「CIDはハンマーでたたいて壊しているが、電子を用いた解離は1つひとつをメスで切って解離させているようなイメージになります。分析の高速化、再現性も向上させ『ZenoTOF7600』システムに搭載されたEADは、魅力的な解離方法でありながら使用しにくい部分がありましたが、切れ味や早さ、汎用性、安定性を改善することで、電子による解離を研究レベルから実用レベルにしました」(建田氏)。

 

■抗体関連医薬のEADを用いた解析例 高いカバレージと詳細な修飾の解析を実現

●中分子(ペプチド)
 パラチロイドホルモン(34アミノ酸)の解析では、特別な前処理なしでLC/MS/MSの分析をかけると100%のカバレージをもった配列が確認された。

 さらに、解析可能なサイズを確認するために、天然物から精製したカルボニックアンヒドラーゼCarbonic Anhydrase2を解析にかけたところ、複数回の解析により、229アミノ酸残基の中分子について、95.3%のシーケンス同定率が得られた。このほか、従来技術のCIDでは解析が難しかった環状ペプチドitullinのアシル基の付加位置が確認できることが実証された。
 

●抗体関連医薬
 今後、エンジニアリングが進む抗体関連医薬品では、翻訳後修飾/化学修飾の解析が必須になる。EADによる解析では、抗体におけるN結合型糖鎖、O結合型糖鎖、翻訳後修飾の位置の特定が可能である。

 また、複数の抗体や抗体のFab部分が結合した複合体では、ジスルフィド結合(SS結合)の位置が重要な情報になる。EADはSS結合が存在する物質解析の際にその結合を切断するが、CIDはほとんど切断しない。この違いを利用して両者の結果を比較することで、SS結合の位置も特定することができる。EADによるバイスペシフィック抗体の解析では、非常に高いカバレージが見られるうえ、還元アルキル化されていないペプチド断片を測定し、両者のデータを比較することでSS結合の位置を判別することができた。

 さらに、1つの分子が環状になるような分子内でのSS結合についても確認が可能であるため、EADはIgG2ベースのモノクローナル抗体や環状ペプチドの分析にも有効であることがわかる。
 

●抗体関連医薬のトップダウン、ミドルダウン解析のカバレージ
 抗体医薬品の円滑な開発には、迅速に不均一性を確認する必要がある。ここでは、ペプチドマッピングよりも速い解析が可能なトップダウン(抗体をそのまま分析)とミドルダウン(抗体をサブユニットに分けて分析)の解析で得られる2つのスペクトルを合わせて確認したところ、ライトチェーンで84.7%%、ヘビーチェーンで76.5%のカバレージが得られた。
 

●抗体薬物複合体
 今後、複雑な薬物と抗体がコンジュゲートされるモダリティを開発する際に、信頼性のある分析技術が必要である。抗体薬物複合体の解析では、薬剤が結合したペプチド断片をEADで解析した。EADではペイロードやリンカーの特性に結果が大きく影響されることなく、高い配列確認性がみられた。

 

■ハードを最大限に活かすソフトウェアを用意

 SCIEXは、ソフトウェア面でも種々のモダリティ解析を支える。まず、中分子、抗体医薬、抗体薬物複合体を一貫したワークフローで解析を可能にするのが『Biologics Explorer Software』である。最新のバイオ医薬品の特性解析用ソフトウェアで、LC/MSを用いたインタクトおよびペプチドマッピングのさまざまな解析に対応する。本ソフトウェアは、これまで述べてきた新規フラグメンテーション機能であるEADに対応し、EADを用いた糖ペプチドの詳細解析、SS結合スクランブル解析、シーケンスバリアント解析、DARの計算など、より深い解析のワークフローを完備している。あらかじめ導入されたワークフローテンプレートに基づく簡便な解析も可能で、編集可能なレポート機能やMAMへのエクスポート機能も備える。

 次に『Molecule Profiler』は、種々のモダリティの生体内変化や不純物の同定および定量を可能にするソフトウェアである。これらは新規モダリティとして高い期待がもたれる核酸医薬品においても重要な分析ニーズである(図1)。具体的には、事前に登録した配列上に分析によって同定された位置を表示させることで、配列確認をすることが可能である。製剤や生体内での安定性についても、不純物や代謝物のリストを一括表示して1画面で確認でき、複数データを取得して継時変化を確認することもできる。

 

■核酸、バイオ医薬品に対応するキャピラリー電気泳動

 新製品のキャピラリー電気泳動装置『BioPhase 8800 system』は、HPLCとは一線を画す分離機能をもち、抗体関連医薬、核酸医薬、遺伝子治療における不均一性の解析、不純物解析、完全性解析といったニーズに応える。8サンプルを同時に測定し、各モダリティの分析目的に応じた使いやすい多数のキット、それぞれの目的に応じたプリセットされたカートリッジ、バリデートされたシステムを兼ね備え、迅速に分析を行うことができる。

 等電点電気泳動におけるアデノ随伴ウイルス(AAV)分析では、カプシドの中に目的の遺伝子が封入されているか否かを分析し、完全性・均一性を確認することが必要である。等電点電気泳動では、高分解能でこれらを確認することができる(図3)。

 核酸分析キットを用いたmRNAのキャピラリー電気泳動では、等電点の原理によって不純物と主生成物、その重合体などを簡便に分離、分析することができる。

 

●図3_0.png
図3

 

 本稿で示した数多くの分析内容は、事例に基づいたものである。新規モダリティ開発では、スピードと正確さを兼ね備えた分析が欠かせない。SCIEXの深化した分析技術は、必ずその助けとなるだろう。

 


【お問い合わせ】
株式会社エービー・サイエックス
〒140-0001 東京都品川区北品川4-7-35
E-Mail:jp_sales@sciex.com
URL:https://sciex.jp

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