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ImmunoPrecise Antibodies社における
抗体発見ワークフローの効率化

ザルトリウス・ジャパン

 分子工学と抗体ヒト化において飛躍的発展を遂げているモノクローナル抗体(mAb)は、ほとんどの臨床適応において最も急成長しているバイオ医薬品クラスの1つとなっています。2017年、EUとアメリカでは合計10の治療用モノクローナル抗体が承認されており、さらに9つの候補が規制審査中で、60が第III相治験の段階にありました(1)。 

 mAbは、多数の治療法のバックボーンであり、非結合治療用抗体、抗体薬物複合体、二重特異性抗体、CAR-T細胞療法などの中心となっています。承認済み抗体医薬の多くは、同じ標的と関連しているか、1つのシグナル伝達経路の複数の構成因子を標的としています。例えば、複数の承認済み抗体医薬がヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、B細胞抗原CD20、programmedcell death-1(PDL1)を標的としていますが、作用機序、抗原エピトープ、抗体フォーマットはさまざまです。このような競争の激しい状況により、作用機序、薬物動態、送達システムが改良された、新たな標的を持つ次世代抗体医薬の創出に対する医薬開発者らの意欲が高まっています(2)。 

 次世代の抗体医薬では、Gタンパク質共役受容体(GPCR)など、さらに困難な治療標的に焦点を当てているため、大規模スクリーニング戦略を実施するためのハイスループット法や、大量のマルチプレックスデータセットを簡単に解析できるソフトウェアの使用が必要となっています。iQue® 高度フローサイトメトリープラットフォームは、抗体の発見と開発を前進させる実用的な結果を迅速に得られる統合ソリューションです。

 iQue® プラットフォームでは、ハイスループットサンプリング、フローサイトメトリー検出、そしてプレートレベルの解析が可能な内蔵解析ソフトウェアが統合されており、384ウェルプレートでは20分未満のサンプリング時間で多くの情報が得られます。従来のフローサイトメトリーのデッドボリュームをなくすことで、アッセイ容量をマイクロリットルレベルまで減らすことができたため、貴重な細胞や試薬でコストを削減できます。データの取得、解析、可視化は、ユーザー定義のテンプレートを用いてプレートごとに臨機応変に実施することができるため、役に立つ結果を得るための時間と労力を大幅に減らすことができます。

 このアプリケーションノートでは、ImmunoPrecise Antibodies社(旧ModiQuest Research社)が抗体発見プロセスでどのようにiQue® 高度フローサイトメトリーを利用しているのかをご紹介します。ImmunoPrecise Antibodies社における抗体発見ワークフローは以下の3つの段階に分けられます。

(1)標的抗原を高い表面レベルで発現できる細胞株を産生するための標的細胞株の改変 
(2)複数の抗原型でのマウスの免疫化と、標的抗原への結合を調べるための免疫血清の検査 
(3)抗体結合と標的特異性に関するハイブリドーマクローンの大規模スクリーニング

 

■方法 

1.細胞株の生成
 特異性アッセイと免疫化のための細胞株は、レンチウイルスを用いた遺伝子導入により作製されました。抗原と関連抗原の細胞表面解析は、シングルセルクローニングの前に間接免疫蛍光法によりプールした細胞で確かめられました。遺伝子導入されていない親細胞と関連抗原を発現する細胞は、ネガティブコントロールとして使用しました。3種類の細胞株のマルチプレックスのために、異なる強度の蛍光色素で細胞を染色しました。これらの細胞を混合し、マイクロタイタープレートの同一ウェルに分注しました。3つの細胞株それぞれを蛍光強度で区別し、血清試験とハイブリドーマスクリーニング試験で抗体結合を分析しました。

2.免疫化
 BALB/cマウスは、さまざまな免疫原を用いるプライムブースト戦略で免疫化しました。免疫前血清と免疫後の2つの時点における免疫血清について、抗体産生を評価しました。 

3.ハイブリドーマの生成
 脾臓B細胞は、電気融合により骨髄腫細胞と融合し、384ウェルプレートで培養し、HAT培地で増殖させて融合細胞株のみを選択しました。上清は、培養14日後に抗体結合を測定しました。 

4.データの取得と解析 
 全データはiQue® プラットフォームを用いて取得し、データはiQue Forecyt®  ソフトウェアを用いて解析しました。マルチプレート試験のヒートマップとプロファイルマップは、Panorama機能を使って可視化しました。

 

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■結果と考察 ─安定な細胞株の産生 

 細胞表面において本来の構造で表面抗原を発現することができることで、細胞ベースの免疫化、結合試験、機能試験などを含めた抗体発見があらゆる面で容易になります。しかしながら、多くのタンパク質は発現が難しく、何百ものクローンのスクリーニングが必要です。iQue® システムでは、96ウェルプレートあたりわずか5分で多数の細胞クローンからの抗原発現を迅速に測定することができます。抗体発現アッセイを小型化できることで、ワークフローの早い段階で細胞株をスクリーニングすることができ、結果までの時間が短縮されます。 

 安定な細胞株を開発するために、抗原発現コンストラクトを含むレンチウイルス粒子で細胞に形質導入しました。シングルセルクローンを選択環境下で約2週間増殖させ、半数の細胞をアッセイプレートに移しました。細胞を洗浄し、抗原特異的蛍光抗体を添加し、パラホルムアルデヒドで細胞を固定しました。 

 オーバーレイヒストグラムプレートビュー(図1A)は各クローン(赤)からの抗原発現レベルを示しており、親細胞からのバックグラウンド発現は灰色で示しています。細胞数は各ウェルで評価しました(データ未掲載)。どの細胞クローンを使っていくのかを決定するため、プロファイルマップをPanoramaで作成します。抗体発現に基づく上位25のクローンが示されます(図1B)。抗原特異性を決定するために必要である関連抗原でも同様の試験を実施しました(データ未掲載)。次に、細胞数で上位25の発現クローンをランク付けしました。この試験では、安定な細胞株を評価しましたが、別の試験では一過的に遺伝子導入した細胞が使用されており、細胞株生産における柔軟性が得られました。
 

ザルトリウス図.jpg

図 安定な標準細胞株の生成iQue Forecyt® ソフトウェアで可視化したスクリーニング結果
 細胞は標的抗原をコードするレンチウイルスを使って遺伝子導入し、選択環境下で培養し、96ウェルプレートに分注しました。細胞増殖後、一定分量の細胞をアッセイプレートに移し、iQue® プラットフォームにより、導入した抗原に特異的な蛍光標識抗体を用いて表面抗原発現を調べました。細胞数は、細胞増殖の指標として同時に測定しました。(A)プレートビューでは、細胞の表面における標的抗原の発現レベルの詳細が示されています。陽性クローンを簡単に確認できるように、遺伝子導入していないコントロール親細胞からの発現データを重ね合わせています。(B)プロファイルマップでは、表面での標的抗原の発現レベルも高い細胞が多数含まれるウェルが示されています。

 

■結論 

 ImmunoPrecise Antibodies社(旧ModiQuest社)では、リード作製までの時間を短縮するために、抗体発見の複数の段階でiQueR® 高度フローサイトメトリープラットフォームを使用しています。ImmunoPrecise Antibodies社とその顧客にとって、iQue®  プラットフォームと統合iQue Forecyt®  ソフトウェアの価値は、迅速なハイスループットサンプリングとリアルタイムのマルチプレートデータ解析にあります。マルチプレックス細胞解析では、複数のアッセイが組み合わされて1つの試験になっているため、抗体スクリーニングワークフローが簡略かつ迅速になります。アッセイ小型化によりコストが削減し、貴重な抗体上清の使用量を減らして追加の確認試験や機能試験のために使用することができます。
 

■この記事の詳細はこちらiQue® の高度なフローサイトメトリープラットフォームの利点はこちらその他の製品についてはこちらをご覧ください。

 


【お問い合わせ】
ザルトリウス・ジャパン株式会社
〒140-0001 東京都品川区北品川1-8-11 Daiwa品川Northビル4階
Eメール:info@sartorius.com
URL:http://www.sartorius.com

 

 

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