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塩野義製薬と共同研究・開発
難溶性薬物の開発に求められる湿式ビーズミルで低コンタミ・高効率技術を確立

広島メタル&マシナリー

 塩野義製薬の田中宏典氏(CMC研究本部 製剤研究所)と広島メタル&マシナリーの平田大介氏(開発部 装置開発課)は、第22回インターフェックスジャパンの講演で、ビーズミルによる高効率かつ低コンタミのナノ粉砕技術と機械の開発について発表した。近年、ナノ製剤製造における不純物の混入は品質上の大きな課題であり、この傾向はさらに進みそうだ。研究のなかでは、ビーズミルによる粉砕工程におけるコンタミの要因となるパラメータを細かく検討し最適処理条件を導き出した。ここで得られた知見について紹介する。

 

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(左) 田中 宏典 氏 (右)平田 大介 氏

 塩野義製薬の田中氏は「金属コンタミネーションは製品化における品質・安全性・規制に及ぼす影響が大きい」と述べる。近年、医薬品候補化合物の多くが難溶解性を示し、その有効な解決策としてビーズミルによる医薬品のナノ粒子化が挙げられる。すでにバイオアベイラビリティの改善や食事の影響回避、用量低減などを目的として、基礎研究や商用生産において適用が進んでいる。ここで課題となるのが、従来のビーズミルの機構上、ジルコニウムなどの金属摩耗の発生が免れず、製品にコンタミしてしまうことである。この課題解決につながる研究報告は少ない。そこで、ビーズミルに対して豊富な経験と知見をもつ広島メタル&マシナリーとの共同研究・開発に着手した。

 

■各種パラメータの影響を解明し、最適条件を探索

 ナノ製剤製造のための要求事項には以下の5点を設定した。商品PH_0.jpg
①粉砕粒子径:200 nm以下
②処理速度:数十分.数時間
③金属コンタミネーションの極小化:スラリーあたり1 mg/L以下、原薬あたり10 μg/g以下
④変質を起こさない処理温度:30℃以下(望ましくは10℃以下)
⑤高い洗浄性:容易に分解可能

 ビーズミルは、撹拌によりスラリー内でビーズと目的粒子を衝突させることで粉砕・分散する。その際にビーズ同士の衝突などにより発生するコンタミを抑制することが目標である。ここで要求事項①、②、③に影響するパラメータとしてビーズ径と周速に注目した。
 ①と②を達成するためには「高速運転/小・中径ビーズ」が適正である。一方で、衝撃力の増大によるコンタミを抑制するためには、「低速運転/小径ビーズ」が適正である。この相反する要求事項を両立する技術的解決を探った。

 

■要求事項達成に向けた技術的検討

ビーズ径:ビーズ径が小さくなると粒子との接触頻度が増し、逆にビーズ径の増大により衝撃力が増す。このような関係があるため、短時間処理・極小コンタミ量となる最適ビーズ径があると考えられた。

周速:周速の高速化により、接触頻度・衝撃力いずれも上昇する。ここで、コンタミ量はある速度で急増する一方で、処理速度は比例的な関係にある。このため、比較的コンタミ量が少ないなかで最速の処理速度を選択した。
但し、最適なビーズ径および周速については理論検討では求められなかったため、再現性を含む157条件の網羅的な実験で各最適点を突き止めた。

薬物濃度:粒子径推移、コンタミ量確認の観点から、5~50 w/w%の範囲で変更し実験した。

装置構成:ミルで、衝撃力を抑える低速運転時のビーズ挙動を考察した。この結果、横型ではビーズが全体にいきわたらずに未処理スラリーが排出され処理効率が下がると想定される。一方で縦型ミルでは下降流を採用することで、スラリーがビーズの集積するミル底部を確実に通過し、スラリーのショートパスが起こらない。このことから、下降流運転が可能なスリット型の縦型ミルを選択した。

メカニカルシール:メカニカルシールとは、本体に流れるスラリーの漏れや外部からの異物浸入を防ぐ軸封装置である。摺動部の数μmのすきまからの漏洩は、シール液で内外圧を極小化し、抑制する。しかし、シール自体の損傷やコンタミ、洗浄性の悪さといった課題がある。このため、シールレス機を開発し、シール部からのコンタミ防止と洗浄性を向上させた。

その他:ビーズ材質は各種比較により、靭性が高くコンタミが極めて少ないジルコニアビーズを選択した。撹拌形状はピン、ディスク形状を比較し、系内を均一に撹拌可能で、短時間の粉砕処理が可能なピン形状を選択。低速運転では1.8倍の処理効率であった。

 上記の条件のもと、難溶解性のフェニトインをモデル薬物として、処理条件を最適化した事例を示す。
 複数の薬物濃度のスラリーで粉砕を実施したところ、主薬濃度が40 w/w%まではコンタミ量に影響がほぼ見られなかった。これよりも濃度が高い場合には、スラリーの粘度が著しく増加し粉砕効率が低下してコンタミ量も増大した。40 w/w%処理では従来の5 w/w%処理と比較すると原薬あたりのコンタミ量は1/8、生産性は8倍に改善された。また、シールレス化の影響を調べたところ、フェニトインの粒子径推移、粉砕効率の影響は見られなかった。シール材質であるタングステン、ニッケルのコンタミ量はゼロになり、
コンタミリスクを回避することができた。

 3年間の共同研究でコンタミ量を低減させた成果を図1にまとめた。ビーズミルのコンタミに及ぼす各種パラメータの影響を一つひとつ解き明かし最適化することにより、スラリーあたりのコンタミ量を0.73 mg/Lまで低減した。また、原薬あたりの処理時間や原薬1gあたりのコンタミに関して図2にまとめた。処理速度は濃度換算で1.6倍と速くなり、コンタミも1.6 μg/gと設定した目標値を大幅に低減することに成功し、従来技術の約1/30となった。

 

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図1 コンタミ量の推移

 コンタミ抑制と高効率化の重要パラメータにはビーズ径と周速が挙げられる。ビーズ径に関しては最適値がある。周速に関しては粉砕効率とコンタミ量がトレードオフの関係にあるためバランスが重要になる。充填率や薬物濃度についても検討したが、影響は小さいことがわかった。これらの検討の結果、最適条件はビーズ径:0.5 mm以下の小径から中径、周速:6 m/s以下の低速から中速、濃度40 w/w%であると結論した。

 また、ここまでフェニトインをモデル薬物として検討してきたが、他の難溶解性薬物でも同条件で粉砕を実施した結果、200 nm粉砕が可能であった。特に、低融点で従来の技術では粉砕が難しいといわれたフェノフィブラートにも適用可能で、本技術のさらなる有用性が示唆された。

 

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図2 最適条件による改善内容

■一体型シールレスビーズミル『アペックスミルF&M シリーズ』

 本共同研究を通して開発されたのが、一体型シールレスビーズミル『アペックスミルF&Mシリーズ』である。シールレスとすることでメカニカルシール由来の金属コンタミゼロ、シール液の混入ゼロ、メカニカルシールの損傷による定期整備省略、装置のコンパクト化を実現し、組付け・分解が容易になり漬け置き洗浄を可能にした。さらに、電動機を回転軸に直結することでVベルトを廃止し、Vベルトからの摩耗粉の発生を防止した。従来、メカニカルシールが担ってきたビーズ漏れ防止は、下降流の使用と、ミル上部にポンピングリング取り付けることで解決した。実験機の150 mLから生産機の2 Lまでラインアップしている。シールレス化の技術は実用新案・特許申請を行っている。

 広島メタル&マシナリーは1983年から湿式ビーズミルを製造販売する。その研究開発はますます深まる。平田氏は、高品質なナノ粒子医薬品製造技術のリーディングカンパニーを目指し、さらなる技術展開を目指すと意気込みを語った。

 


■お問い合わせ
株式会社広島メタル&マシナリー
〒160-0022 東京都新宿区新宿1-8-1 大橋御苑駅ビル2F
T E L:03-3226-6511 FAX:03-5363-0583
E-Mail:info.chem@hiroshimamm.com
URL:http://www.hiroshimamm.com

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