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リアルタイムの微生物モニタリングによる効率化  
“これからの微生物管理”の方向性

リオン

 第十七改正日本薬局方の参考情報に微生物迅速法が収載され、より効率的な微生物管理方法として注目を浴びている。
  2018 年11 月7 日にリオンが東京都内で開催した「微生物迅速測定法の事例報告会」では、製薬企業をはじめ、飲料や透析分野からの発表が行われ、微生物迅速法の有用性について議論が交わされた。本稿では、報告会の発表内容を基に、迅速法がもたらすメリットについて考察する。
 

微生物迅速法をとりまく規制環境

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GMP Technical Advisor
佐々木 次雄氏

 基調講演でGMP Technical Advisor の佐々木次雄氏は、国内外のレギュレーションを横断的に総括した。現在、改訂ドラフトのパブコメ募集が行われているEU およびPIC/S GMP Annex1 では、工程管理試験について9. 28 項で、「確立された方法と少なくとも同等であると実証されている限り、迅速微生物モニタリング法を用いることができる」という趣旨の記載がされ、また、出荷試験については10. 11 項にて「迅速微生物試験法は、該当する製品または工程に対してバリデートされ、登録済の製品の試験規格書で承認される必要がある」とされている。

 佐々木氏は、これらの記載から「工程管理・出荷試験ともに迅速法の適用は認められる」とし、「出荷判定試験(無菌試験など)での適用は当局への一変申請が必要で、工程管理試験(製薬用水中のバイオバーデン管理など)では、査察時に科学的データに基づく説明が求められるものの、公定法と同等以上であれば採用可能。このポイントを押さえて導入検討すべき」と、規制面からの留意点を示した。

 さらに、「注射用水(WFI)では、これまで欧州薬局方(EP)は微生物汚染の懸念から蒸留法しか認めていなかったが、2017 年から非蒸留法を認めるようになった。2015 年3 月のWFI に関する欧州医薬品庁(EMA)の見解書では、“微生物が適切に管理され、水の最終品質が適切であれば、微生物学的安全性については必ずしも危惧する必要はない”とされている」と紹介し、「結果取得までの期間短縮や、汚染の予防・是正措置を迅速に実行するための強力なツールになり得る」と、迅速法の普及に期待を寄せた。

 

コストメリットについての考察

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日本PDA製薬学会
無菌製品GMP委員会
​​​​​森 充生氏

 製薬企業の事例については、日本PDA 製薬学会無菌製品GMP 委員会の森充生氏が発表した。森氏も佐々木氏同様、培養法と比較した迅速法のメリットに「結果取得が迅速」という点を挙げる。結果取得までの期間短縮により、異常・逸脱の早期発見が可能になり、工程管理がフレキシブルになるためだ。

 さらに、もたらされるコストメリットにも話を展開した森氏は、「導入課題としてよくコストの問題が挙げられるが、生産機器の非稼働時間も製造機会損失という観点でコストとして捉えられる。培養法から迅速法への切り替えで結果取得が短縮されれば、生産への移行がスピーディになり、非稼働時間を低減できるため、長期的視点ではコスト面でもプラス効果があるのでは」との見解を述べた(図1)。

 実際の検討例として、製薬用水製造装置導入時のクオリフィケーションに迅速法を用いたケースを報告した森氏は、「迅速法導入で培養期間が不要になるとともに、データをリアルタイムで把握してトレンドを瞬時に観察できた。水質悪化時にタンクブロー/供給停止などの処置を自動で行えれば、一定水準での自動運転も実現できるのではないか」と語り、「連続リアルタイムモニタリング活用により、新規設備を短期間で立ち上げ、維持することが可能と考えられた」と検討成果を紹介した。
 

 

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図1 コストメリットの考察

 

 

現状の課題解決への提案

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リオン株式会社
R&Dセンター技術開発部
関本 一真氏

 このように、製薬業界でも微生物迅速測定法への注目が高まる中、リオンの関本一真氏は「生物粒子計数器を通して、製品品質向上やコスト・手間の削減に貢献したい」として、同社の「生物粒子計数器」の概要について発表した。

 製薬用水などの管理で現在、主流の培養法は微生物の活性状態判別、単一菌種の分離など、多角的な管理を可能にする有用な分析ツールである一方、採水した瞬間の汚染状態しか把握できない間欠性や、結果取得に時間を要すること、検出菌種が限られるなどの課題を抱えている。関本氏はこれら課題について「“分析”と“検知”を分けて考える」ことを提案した。

 「現状、間欠的で手間のかかる“分析(培養法)”を繰り返すことで、“検知”を兼ねさせている。これに対し、連続的かつ自動化可能な“検知(スクリーニング)”に主眼を置き、微生物汚染リスクの上昇を認めたときのみ詳細に“分析”を行うことで、管理リソース削減が可能になる」(関本氏)。

 連続的かつ自動の“検知(常時監視)”により、製造工程改善と品質管理レベルの向上も期待できる。これを実現する方法の1 つが、生物粒子計数器の活用だ。

 

従来法と“同等以上”の検出感度を実現

 リオンの生物粒子計数器は、微生物が持つ代謝活性物質(フラビン)の自家蛍光を検出して水中細菌をカウントする原理だが、構造上大きな特長といえるのが、深紫外線照射部である。

 水棲細菌は、フラビン由来の自家蛍光強度が微弱だが、前もって深紫外線照射部から深紫外線(300nmよりも短波長な紫外線)を照射することで自家蛍光を特異的に増強させ、検出感度を向上させることが可能になる。関本氏は、実際に培養法と生物粒子計数器の検出感度が同等であることを示すデータ(図2)や、深紫外線照射部の有無による感度比較結果を紹介し、生物粒子計数器が規制上必須となる“従来法と同等以上”の検出感度を有することを示唆した。

 また、非微生物粒子の自家蛍光を検出してしまう偽陽性リスクも、本装置では深紫外線照射部によって、センサ部自体の検出感度を低く維持することで低減していることや、深紫外線の細菌不活化効果で装置内微生物汚染防止にもつながるといった総合的なメリットも紹介した。

 

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図2 培養法と生物粒子計数器の比較

 

 報告会では、この他にも飲料や透析分野での例が発表され、リオンの生物粒子計数器の使用性の広さが垣間見えた。製薬のみならず、さまざまな業界での導入検討が進められれば、これまで接点のなかった業界間での課題や知見が集積し、生物粒子計数器を通した新たな微生物管理の方向性が見えてくるかもしれない。その可能性を感じさせる報告会であった。
 


■お問い合わせ
リオン株式会社
〒185-8533 東京都国分寺市東元町3-20-41
TEL:042-359-7878 
URL:https://www.rion.co.jp

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