| 開催日 | 2026年1月21日(水) |
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| 開催地 | Web |
講師 大阪大学 大学院医学系研究科 医療情報学研究室 特任助教 博士(医学) 杉本 賢人 氏
■はじめに
本講義では、ChatGPTなどに代表される大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)の医療応用について、基礎から最新動向までを体系的に解説する。特に、電子カルテなどのリアルワールドデータ(RWD)を対象とした自然言語処理(NLP)の活用事例を中心に、診療支援・研究支援・業務効率化といった多様な応用可能性を具体的に紹介する。また、医療データ特有の課題であるプライバシー保護・データ品質・倫理的配慮に触れつつ、実装に向けた課題と今後の展望を議論する。さらに、実際の研究や臨床現場での導入経験をもとに、医療AIを安全かつ持続的に活用するための視点を提示し、参加者が自施設での利活用を構想するための実践的な知見を得ることを目的とする。
■想定される主な受講対象者
医療AIやデジタルヘルス分野に関心を持つ医療機関・企業・研究者の方
■必要な予備知識
特別なプログラミングスキルやAIの専門知識は不要であるが、
医療情報システム、医療データや臨床業務の基本的な流れに関する理解があると、内容をより深く理解できる。
■本セミナーに参加して修得できること
・大規模言語モデル(LLM)の基本原理と医療応用の最前線
・電子カルテ/放射線レポートなどリアルワールドデータ(RWD)の解析実践
・医療自然言語処理(NLP)による情報抽出・構造化技術
・医療AI導入における課題(データ品質・倫理・プライバシー)と対策
・臨床/研究/業務改善へのLLM応用の実例と今後の展望
1.導入:医療とAIの現在地
1.1 医療AIの進化と第4次AIブーム
1.2 生成AIとは何か ― ChatGPTと大規模言語モデルの概要
1.3 医療におけるAI応用の歴史と潮流
1.4 医療情報学におけるAI・NLP研究の位置づけ
1.5 リアルワールドデータ(RWD)の定義と意義
1.6 RWDの主要ソース(レセプト・DPC・電子カルテ・画像データ)
2.自然言語処理による構造化技術
2.1 医療文書の非構造化とその課題
2.2 放射線レポートを対象とした情報抽出の重要性
2.3 エンティティ認識(固有表現抽出)の基本概念
2.4 関係性判定 ― 部位・所見・診断のリンク化
2.5 確信度判定 ― 肯定・否定・疑いのスケーリング
2.6 深層学習モデル(BiLSTM・BERT)の応用
2.7 自然言語処理による構造化結果の妥当性・性能評価
3.応用事例:NLPとRWDの融合
3.1 画像診断レポートの構造化による症例抽出の効率化
3.2 がん疑い所見の自動抽出システムの開発(J-MID多施設研究)
3.3 治療効果判定・病期分類への応用
3.4 構造化結果を活用した弱教師学習の実例
3.5 医療安全への貢献:重要所見見落とし防止システム
3.6 構造化情報によるレジストリ・市販後調査支援
3.7 RWD拡充による臨床研究・診療支援の広がり
4.大規模言語モデル(LLM)の登場と医療応用
4.1 言語モデルの進化とLLMの原理
4.2 教師あり学習からプロンプト学習への転換
4.3 Instruction TuningとRLHF(人間フィードバック学習)
4.4 医療領域におけるLLM応用の現状
4.5 医師国家試験・専門試験での性能検証(USMLE, GPT-4oなど)
4.6 医療文書作成支援(退院サマリー・紹介状作成)
5.医療LLMの社会実装と課題
5.1 国内での実証事例
5.2 法的・倫理的課題 ― 個人情報・同意・第三者提供の解釈
5.3 医療現場でのLLM活用におけるリスクと安全性
5.4 医療AIベンチマークの課題と評価指標の再設計
5.5 幻覚(Hallucination)と事実性(Factuality)の課題
5.6 LLM導入に向けた実装戦略と今後のガイドライン整備
6.今後の展望
6.1 LLMエージェントと自律型AIの可能性
6.2 マルチモーダルLLMによる画像・時系列データの統合
6.3 臨床ワークフローにおけるAI支援の未来像
6.4 研究・診療・教育の三位一体でのAI活用戦略

