2020/05/26

米国Tetra社の完全子会社化に関するお知らせ

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、2020年5月25日開催の取締役会において、以下の通り、Tetra Therapeutics(以下「Tetra社」)の全株式を取得し、完全子会社化することを決議しましたので、お知らせいたします。

 

1.      本子会社化の目的

 当社は、中期経営計画における重要課題として「個人が生き生きとした社会創り」を掲げ、精神・中枢神経系疾患への取り組みを進めております。Tetra社は、脆弱X症候群(Fragile X Syndrome: FXS)、アルツハイマー型認知症(Alzheimer’s Disease: AD)、外傷性脳損傷、その他の脳疾患で苦しむ患者さまに対する治療薬を開発するバイオテクノロジー関連の研究開発型企業です。当社は2018年12月に認知機能改善薬候補BPN14770のライセンスならびに出資契約をTetra社と締結し、日本、韓国、台湾における独占的開発・製造・販売権を獲得するとともに、同化合物の研究開発を協力して推進してまいりました1。米国においては、Tetra社がFXS患者とAD患者を対象としたPhase II試験2を実施し、後者がこのたび完了致しました。また、2020年3月には、両社の提携をさらに強化すべく、一定の条件を満たした場合に当社がTetra社を完全子会社化する合併契約を締結しておりました3

 

 本Phase II試験は、BPN14770を10mgまたは25mg、早期AD患者に対して1日2回、13週間経口投与し、有効性と安全性をプラセボ群と比較した二重盲検、無作為化、並行群間比較試験です。主要評価項目として、治療13週後におけるRepeatable Battery for the Assessment of Neurological Status-Delayed Memory Index(RBANS- DMI)スコアのベースラインからの変化量を評価しました。

 

 本試験結果では、BPN14770 10mgおよび25mg投与群は、プラセボ投与群との比較において、いずれも主要評価項目であるRBANS-DMIスコアの有意な改善は示しませんでしたが、部分集団解析を行った結果、25mg投与群の臨床的認知症重症度判定尺度(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes:CDR-SB)のベースラインスコアが中央値以上の患者集団において、投与13週目のCDR-SBスコアの有意な改善(p=0.0295)を示したことから、本薬のADおよび他の適応(例 開発進行中のFXS)における開発を継続する意義があると判断しました。安全性に関しては、本試験においても、特に臨床上問題となる有害事象は認められませんでした。さらに、Tetra社の有する中枢神経系の創薬ノウハウの当社研究開発への活用も期待できることから、Tetra社の全株式を取得し、同社を完全子会社化することにいたしました。Tetra社の子会社化の結果、当社はBPN14770およびTetra社が現在保有する全化合物のグローバルにおける権利を獲得することになります。

 

 

2.      Tetra社の概要

1.       

名称

Tetra Therapeutics Inc.(正式名称:Tetra Discovery Partners Inc.)

2.       

本社所在地

米国ミシガン州

3.       

代表者の役職・氏名

CEO:Mark Gurney

4.       

事業内容

医薬品の研究・開発

5.       

設立年

2011年

 

3.      完全子会社化の日程

2020年5月26日

 

4.      今後の見通し

 Tetra社の完全子会社化が当期の連結業績に与える影響は現時点では軽微と考えておりますが、今後、状況の変化により、業績に与える影響を認識した時点で速やかに公表いたします。

以 上

 

【BPN14770について】

 BPN14770は、記憶形成に関わるPhosphodiesterase 4Dを標的とした新規の選択的ネガティブアロステリックモジュレーターです。BPN14770のユニークな作用機序は、FXSや認知症、学習/発達障害、統合失調症等の中枢神経疾患で低下している認知機能を向上させる可能性が示唆されています。

BPN14770は、非臨床試験において、FXSにおける神経結合の成熟化を促進するとともに、ADにおいて障害される神経結合を保護することが示されています。

現在Tetra社は、米国においてFDAよりオーファン指定を受けたFXSを対象にしたPhase II試験を実施中です。

 

【Tetra社について】

 Tetra社は、FXS、AD、外傷性脳損傷、その他の脳疾患で苦しむ患者さまに対する治療薬を開発するバイオテクノロジー関連の研究開発型企業です。タンパク構造をベースにしたドラッグデザインを行い、記憶形成や学習だけでなく神経炎症や外傷性脳損傷においても重要な役割を担うPhosphodiesterase 4に対する新規メカニズムのネガティブアロステリックモジュレーターを探索しています。本社は米国ミシガン州にあります。詳細はTetra社のホームページをご覧ください。

 

参考:

1.      2018年12月19日 プレスリリース

新規認知機能改善薬の開発候補品BPN14770の導入に関するTetra Discovery Partners社とのライセンス契約および出資契約の締結について

2.         https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03817684

3.      2020年3月6日 プレスリリース

Tetra Therapeutics社との新たな契約の締結について-認知機能改善薬候補BPN14770に関する戦略的提携のさらなる強化-