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筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する薬効評価技術の確立について
-iPS細胞の活用により新薬候補物質の創出に貢献-

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2023.05.29

学校法人 愛知医科大学
東レ株式会社
 



 学校法人愛知医科大学(研究開発代表者:祖父江元、研究開発分担者:岡田洋平、以下、愛知医科大学)および東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:日覺 昭廣、以下、東レ)は、筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)に対する新薬創出を目指した共同研究を実施し、このたび、ALSに対する新薬候補物質の薬効を評価する基本技術を確立しました。
 本技術は、ALSに対する新薬候補物質の患者さんに対する有効性を高精度に評価・予測できると考えられ、創薬の成功確率向上や加速につながるものと期待されます。

 ALSは、運動神経細胞が傷害されることによって全身性の筋萎縮と筋力低下が起こり、死に至る難病で(発症後平均余命3~5年)、日本国内では約1万人の患者さんがいると推定されています※1。また、ALS患者さんは病気の進行パターンの個人差が大きく、その病態も多様です。そのため、多様な病態に対応した実験モデル※2の作製が困難であることが、ALS創薬の課題の一つでした。

 ALS患者さんの臨床・遺伝情報が集積するJaCALS※3のデータ解析結果から、病気の進行パターンが4つのグループに分類できることや、各グループの患者数の割合がすでに明らかにされています※4

 本共同研究では、この4つのグループから患者数割合に従って、30名の患者さんのiPS細胞※5由来運動神経細胞を効率良く作製し、新薬候補物質の薬効を評価する基本技術を確立しました。本技術は、新薬候補物質がどの病態パターンの患者さんに対して有効性を示すかを、評価・予測することができると考えられます。したがって、特定の患者グループに対して有効性を示す新規ALS治療薬の創出につながることが期待されます。

 なお、本共同研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の創薬基盤推進事業「産学官共同創薬技術活用プロジェクト(GAPFREE)」下で実施※6しました。

 今後、愛知医科大学と東レは、一日でも早く有用なALS治療薬を患者さんとそのご家族、関係者の皆様のもとに届けるため、本技術のさらなる高度化とこれを活用した創薬研究を進めるとともに、神経疾患に取り組む製薬関連企業の皆様とのパートナーシップあるいはオープンイノベーションを推進し、新薬創出に貢献してまいります。


 

ALS評価パネルの概要および活用イメージ
 


<用語説明・注釈>
※1 厚生労働省が衛生行政報告例として公表しているALSを対象とした特定医療費(指定難病)医療受給者証所持者数をもとに推定。

※2 実験モデル
ヒトの病気の状態を再現した動物や細胞であり、ヒトに投与する前の新薬候補物質の薬効評価に用いられる。

※3 JaCALS(Japanese Consortium for ALS research)
ALS患者さんの臨床・遺伝情報の解析を通じて、病態解明と治療法の開発を目指す研究組織(中央事務局:愛知医科大学)。
日本国内患者さん2,000名以上の病気の進行パターン等の医療情報を収集・蓄積している。

※4 参考論文
Watanabe H, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2016; 87: 851-858.

※5 iPS細胞(induced pluripotent stem cell)
身体の様々な細胞に変化できる力を持つ細胞で、人間の血液細胞等から作製できる。
ALS患者さん由来のiPS細胞を用いれば、培養皿のなかで病気の状態を再現することができ、新薬候補物質の薬効評価に有用であることが示唆されている(参考論文:(1)Imamura K, et al. Sci Transl Med. 2017; 9: eaaf3962; (2)Fujimori K, et al. Nat Med. 2018; 24: 1579-1589.)。

※6 AMEDの事業概要
事業名:
創薬基盤推進研究事業 「産学官共同創薬技術活用プロジェクト(GAPFREE)」
研究開発課題名:
大規模疾患レジストリとiPS細胞技術を活用した筋委縮性側索硬化症に対する新規治療薬開発
研究期間: 2019年4月~2023年3月
URL: https://www.amed.go.jp/koubo/06/01/0601B_00057.html
 
以 上