2020/09/30

塩野義製薬とHanaVax社との経鼻肺炎球菌ワクチンに関する
ライセンス契約の締結について

塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」)と東京大学発の創薬ベンチャーである株式会社HanaVax(本社:東京都中央区、代表取締役社長:黄 宝星 、以下「HanaVax社」)は、このたび、HanaVax社が開発中の新規経鼻肺炎球菌ワクチンに関するライセンス契約を締結しましたので、お知らせいたします。本契約の締結により、塩野義製薬は、本ワクチンの全世界における独占的研究・開発・製造・流通ならびに販売権を取得し、HanaVax社に対して、契約一時金、開発の進展に応じたマイルストン、および製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーを支払います。

 

本ワクチンは、肺炎球菌感染症の予防を目的とする経鼻投与型のワクチンです。肺炎は日本における死亡要因の第5位であり、肺炎球菌はその原因となる病原微生物の中で最も重要な細菌の一つです。また肺炎球菌は、特に高齢者や小児等に対して、重篤な肺炎のほか、髄膜炎、敗血症などの侵襲性肺炎球菌感染症を引き起こすことが知られています。肺炎球菌には90種を超える血清型が報告されていますが、既存ワクチンの効果は一部の血清型のみに限られるため、より広範な血清型に対して有効なワクチンの開発が求められています。

 

本ワクチンは、広範な抗原として期待されるPspA抗原、およびHanaVax社の独自技術であるカチオン化ナノゲルデリバリーシステム1を用いており、鼻腔内に投与することで、従来の注射による痛みがなく、感染部位である呼吸器粘膜ならびに全身に対して効果的に免疫を誘導することができます。これまでに経鼻投与による非臨床試験において、呼吸器粘膜および全身への免疫誘導2,3、および感染予防効果3が確認されています。

塩野義製薬とHanaVax社は、アンメットメディカルニーズを満たす画期的な次世代経鼻ワクチンの提供を通じて、肺炎球菌に起因する感染症の脅威から人々を解放するため、感染症領域における塩野義製薬の強みと、粘膜免疫学のパイオニアであるHanaVax社の強みを融合し、本ワクチンの研究開発を加速してまいります。

 

以 上

 

 

 

 

PspA抗原について

PspA(Pneumococcal Surface Protein A)は菌体表層に存在するタンパク質で、肺炎球菌が共通して有する病原因子の一つです。肺炎球菌はPspAの働きによって、宿主免疫による排除から免れていると考えられています。PspAは広範な血清型に有効性を示す肺炎球菌抗原として期待されています。

 

カチオン化ナノゲルデリバリーシステムについて

呼吸器感染症に対するワクチンは、全身系の免疫に加えて、病原体の侵入門戸である呼吸器粘膜に「粘膜免疫」を誘導できる経鼻ワクチンがもっとも有効なワクチンと考えられています。カチオン化ナノゲルデリバリーシステムは、天然に存在する多糖のプルランをコレステロール修飾、およびカチオン化修飾することにより粘膜保持性を高めたものです。ワクチン抗原をナノゲル内に封入し、経鼻投与を介して粘膜に導入することで、全身系および粘膜系両方の免疫を効果的に誘導することが期待されます。

 

塩野義製薬株式会社について

塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、その実現に向けて、疾患啓発、予防、診断、治療、重症化抑制、適正使用といった感染症のトータルケアに必要な様々な取り組みを進めています。塩野義製薬の詳細はホームページをご覧ください。https://www.shionogi.com/jp/ja/

 

株式会社HanaVaxについて

HanaVaxは、「経鼻ワクチンで健康社会を創出する」をミッションに、粘膜免疫学研究とナノゲル研究の草分け的存在の東京大学および千葉大学 清野宏特任教授と京都大学 秋吉一成教授との10年にわたる共同研究から生まれた「次世代型経鼻ワクチン」の開発を行う創薬ベンチャーです。HanaVaxの詳細はホームページをご覧ください。https://www.hanavax.co.jp/

 

 

[参考]

1, Nochi T. et.al., “Nanogel antigenic protein delivery system for adjuvant-free intranasal vaccines” Nature Materials, 2010, 9, 572-578. https://www.nature.com/articles/nmat2784

2, Fukuyama Y. et al., “Nanogel-Based pneumococcal surface protein A nasal vaccine induces microRNA-associated Th17 cell responses with neutralizing antibodies against Streptococcus pneumoniae in macaques” Mucosal Immunology, 2015, 8, 1144-1153. https://www.nature.com/articles/mi20155

3, Kong H. Gyu et al., “Nanogel-Based PspA Intranasal Vaccine Prevents Invasive Disease and Nasal Colonization by Streptococcus pneumoniaeInfection and Immunity, 2013, 81, 1625-1634. https://iai.asm.org/content/81/5/1625.long